宇宙

2023.01.26 14:00

いま見られる「緑のZTF彗星」にまつわる不都合な真実

残念ながらZTF彗星C/2022 E3はこのようには「見えない」(2013年11月27日のラヴジョイ彗星C/2013 R1。Getty Images)

残念ながらZTF彗星C/2022 E3はこのようには「見えない」(2013年11月27日のラヴジョイ彗星C/2013 R1。Getty Images)

外へ出て北の空を見上げると、もしいくつかのウェブサイトで読んだことを信じるなら、明るい緑の彗星が空を駆け抜けるところが見えただろう。しかし実際には、そんなものはまったく見えない。ZTF彗星(C/2022 E3)に関する数多くの大げさな記事がネットを出ているが、太陽系の縁からやってくるこの訪問者を実際に見ることに関する少々不都合な真実がある。
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あなたの庭からZTF彗星を見ることはできるのか? 確かに見える! ただしそれは、あなたに忍耐力と上等な双眼鏡か小さな望遠鏡があるならばだ。しかも、最も明るくなったところを見るまでには数週間以上待つ必要がある。

彗星のエキスパートであるアラン・ヘイル(1990年代後半の明るいヘール・ボップ彗星の共同発見者)のFacebook投稿に触発され、私はZTF彗星に関する記事を読む際に注意すべき理由を5つ紹介する。さらに、それでも興味が尽きない人たちのために、正確にいつどうすれば見ることができるかに関する私の考えも書いておく。

1. この彗星は暗い

それは肉眼で見るにはあまりにも暗い。現在、この彗星は太陽光を反射して約7等級の明るさで見えている。これは理想的に暗い宇宙の条件下で肉眼で見える明るさをわずかに下回る。つまりは双眼鏡が必要になる。2020年に多くのすばらしい長時間露光写真が撮影されたネオワイズ彗星を見るために双眼鏡が必要だったのと同じだ。天体写真の世界では、カメラはほぼ常に静止している。ZTF彗星を双眼鏡や小さな望遠鏡で覗くと、鮮明でぼんやりした斑点に見える。

2. 「空を駆け抜ける」ことはない

ZTF彗星は、誰かがいっているように「空を駆け抜ける」ことはない。彗星はそのような動き方をしない。それは「流星」、天文学者の言葉でいう隕石だ。彗星は毎夜移動するが「駆け抜ける」ように動くことはない。

3. 「一生に一度の体験」ではない

いや、厳密にいえばそうなのだが、そうでない彗星などあるだろうか? ZTF彗星の軌道周期は5万年なので、太陽系を訪れるのは石器時代以来であり、もちろん有史以来(別の人たちはそう表現する)の出現だ。短周期彗星でさえ、比較的稀にしかやってこない。ハレー彗星(最大かつ最も有名な彗星)は約75年ごとに太陽を回り(次は2061年)、比較的明るいネオワイズ彗星は4400~6700年間は戻ってこない。アマチュア天文家たちが、どの瞬間にも5つくらいの彗星を望遠鏡で見ていることを考えると、ZTF彗星は必ずしも稀ではない。そして「比較的」明るいが「肉眼で見える」明るさではない。
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翻訳=髙橋信夫

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