せめて月に一度、可能なら二度でも三度でも、誰にも邪魔されず、リモートワークや寛ぎに、また遊びにと、自分のために滞在してみるといい。
日本のホテルは旅館の歴史と相俟って、伝統的かと思えば西洋のホテルのごとくスタイリッシュに最新鋭設備を纏い東西融合の感性が心地いい。
もてなしは繊細な日本流、デザインも世界が認める洗練さが光る。
まずは週末、金曜日の夜にチェックイン、ゆったりと日曜日の午後まで、我儘な時を満喫するのが大人のホテル利用の流儀である。
ホテルジャーナリスト せきねきょうこ
江戸情漂う粋な都会の中心にしっとりと魅力を放つ豪華ホテル
東京日本橋の瀟洒なビルの高層階に、2005年12月2日、日本初登場となった「マンダリン オリエンタル 東京」が開業した。現在、世界24カ国、36のホテルと9つのレジデンスを有するマンダリン・オリエンタルのひとつとして、華やかなデビュー以来すでに18年目に入り、人気ブランドとして定着している。日本橋地区は江戸時代から商業で大いに繁栄した地域であり、今尚、老舗店舗がその名代を新世代に継いでいる。日本橋は東京でも格式のある特別な地区であり、隣の銀座の華やかさや、丸の内の整然としたビジネス街とは趣の違う重厚感や歴史の香りがしっとりと街に漂っている。
「マンダリン オリエンタル 東京」は、開業当初から、燦然と輝く高級ブランドのホテルとして大きな期待が寄せられていた。開業時、待ち望まれたホテルは人々の期待以上の上質感に包まれ、一瞬にしてホテル愛好家たちを魅了していた記憶がある。そうしたファンの憧れと熱い眼差しに包まれ、時を経た今も尚、どこも古びる様子はなく、2年ほど前に実施されたリニューアルも相俟って落ち着いた雰囲気が醸し出されている。
「お天気の良い日には富士山も見えますよ」と、スタッフの一人は曇り空を見つめて残念そうに話してくれた。確かに38階からは晴れていれば東京のドラマチックな情景が見渡せ、その奥には富士山が遠望できる。海外の滞在者の歓びはおろか、富士山には日本人である私たちでさえ、その凛とした姿に、思わず襟を正してしまうほど不思議な力が宿っている。
客室はビルの30階から36階に位置し、方向によっては房総半島や筑波山、箱根の山並みの稜線まで見渡せる絶景だ。客室数は全179室、2019年に実施されたというゲストルーム改装では、コンセプトである「森と水」が、成長・成熟し、春を迎えるというホテルのストーリーが表現されている。
四季が移り変わり成長する様をゴールドやオレンジ、ダークパープルで表現。客室内の目立つ場所であるヘッドボードにはしだれ桜や藤棚の刺繍があしらわれ、和洋の融合が現代的な上質感を感じさせる。