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2023.01.30

新たな価値を生み出す「アントレプレナーシップ」の正体とは〜「Art & Entrepreneurship Tokyo(AET)」が描く⼤丸有エリアの未来

アーティストがビジネス街に触れたとき、どんなイノベーションが起こるのか。そんな発想から有楽町の地で始まった実証パイロットプログラム「YAU(ヤウ/「YURAKUCHO ART URBANISM」の略)」。起業家とアーティストに共通するマインドがアントレプレナーシップなのではという発想から、YAUに実行委員として参加する三菱地所とForbes JAPANによるプロジェクト「Art & Entrepreneurship Tokyo(以下、AET)」が始動した。起業家とアーティストが対話することによって、一体どんな化学反応が起きるのだろうか。


「アントレプレナーシップ」の概念をアップデートする

⽇本有数のビジネス街として、グローバルな経済活動を牽引する⼤⼿町・丸の内・有楽町エリア(以下、⼤丸有エリア)。ここで2022年にスタートしたのが、有楽町アートアーバニズム「YAU(ヤウ)」だ。アートアーバニズムとは「アート」と「アーバニズム」を掛け合わせた造語。大丸有エリアの立地企業などによるアーティストの持続的な支援を通して、大丸有エリアにおける都市空間創造や都市活動展開を一体化させるイノベーションを誘発する仕組みの構築を目指している。

22年12月16日には、YAUに実行委員として参加する三菱地所とForbes JAPANのコラボーレーションによるプロジェクト「Art & Entrepreneurship Tokyo(以下、AET)」の第1回目のセッションとして「AET YURAKUCHO SESSIONS 越境する創造性〜アート・サイエンス・ビジネス〜」が開催された。

このプロジェクトは、アーティストや、アーティストと共通するマインドをもつ起業家、そしてビジネスパーソンが、未来に向けたブレイクスルーとなる新しい発想やコンセプトを創出し「アントレプレナーシップ」の概念をアップデートするために語り合う、3回に渡って行われるセッションだ。

今回、登壇したのはユーグレナ 取締役 代表執行役員 CEO、リアルテックファンド 代表の永田暁彦、ジーンクエスト 代表取締役、ユーグレナ 執行役員の高橋祥子、アーティスト、デザイナーの長谷川愛の3人。アートとサイエンスは世界に新しいものの見方、考え方を創出する点において似ているという観点から、セッションのテーマを「アートとサイエンスの近似性、ビジネスとの越境」とし、それぞれの専門分野の視点から対話を行った。

長谷川は、アーティストであり、また、ビジネスパーソン向けの講座などで講師を務めてきた実績をもつ。一方で永田、高橋は、アーティストに共通する姿勢やマインドをもつ起業家である。

高橋祥子 ジーンクエスト 代表取締役、ユーグレナ 執行役員

高橋祥子 ジーンクエスト 代表取締役、ユーグレナ 執行役員


サイエンスとアート、ビジネスの融合に秘められた大いなる可能性

セッションの冒頭で高橋がまず口にしたのが、「長谷川さんの思考の柔軟性にいつも驚かされます」という言葉だった。高橋の専門は遺伝子の解析。現在は、個人向けに生活習慣病など疾患のリスクや体質など300項目以上におよぶ遺伝子解析サービスを展開する一方で、研究者としての活動も継続し、遺伝子の解析情報をデータベース化している。

「研究を社会実装する場をつくりたくて起業した」という高橋。2013年にジーンクエストを設立した当初、「個人向けの遺伝子解析サービスを開始する」と記者会見したときには想像以上に多くの批判的な反応があったという。自身のそんなエピソードを交えながら、サイエンスとアートを融合させることで拓けてくる可能性について語り始めた。

「私が起業する前から、サイエンスの技術的に自分の遺伝子情報を知るのが可能になることは自明のことでした。驚いたのは、私がそれを社会実装すると発表してから、『倫理的に許されるのか』という議論がはじめて起きたこと。なぜ、もっと早くにその議論が起きなかったのか。本来なら、技術の進歩と同時に一人ひとりが常に考え続けるべき問いであると私は考えているからです」

先の「長谷川さんには驚かされる」という言葉は、こうした経験を踏まえてのものだという。高橋が特に印象的だったと語るのは、長谷川が15年に発表した「インポッシブルベイビー」だ。この作品は実在する同性カップルの一部の遺伝子情報からできうる子どもの姿や、性格等を予測して制作した「家族写真」で、展示ではこの家族写真とともに、この作品についてSNSで集めた賛否両論の意見が壁に掲示された。

この展示の前提にあるのは、「技術的には可能でも倫理的に許されるのか、そしてそれは誰がどう決めているのか」という問題提起。「アートを通じて、サイエンスの研究の最先端にある議論を専門家だけでなく広く一般に投げかけた点において、とても重要な展示だった」と振り返る。

「サイエンスが世界に与えるインパクトの大きさは、社会がそのサイエンスをどう認識しているかが大きく影響する。だからこそ、アートを融合させることでその議論の場が広がることはとても意義のあることだし、例えば中等・高等教育に組み込んで子どもの頃からそういった議論に触れる機会をつくるようになるとすごくよいと思う」というのが、高橋の主張だ。

長谷川 愛 アーティスト/デザイナー

長谷川 愛 アーティスト/デザイナー


これに対して長谷川は、「サイエンスとアートを融合することで、最先端の技術に関する議論が柔軟になり、サイエンスの可能性を広げていくことは十分にありえる」と期待を寄せる一方で、アートがサイエンスのプロパガンダとして機能する危険性もあり、アートの使い道はしっかりと考えておくべきと自身の考えを述べた。

「例えば、『インポッシブルベイビー』をはじめ、私のこれまでの作品の多くが、倫理観や価値観に訴えかけようとする強いメッセージを含むものでした。反応は賛否両論ですが、幸い、それらは『作品に対する感想』の範囲です。強く批判されたり、問題になったりしなかったのは、そこにビジネスを絡ませず、純粋にアートとして、できるだけフラットに議論をすすめるために発表したからなのだと自分では思っています。だから、サイエンスとアート、ビジネスの融合は大きな可能性を秘めていると同時に、常に慎重に行っていくべきものだと私は思っています」 

永田暁彦 ユーグレナ 取締役 代表執行役員 CEO、リアルテックファンド 代表

永田暁彦 ユーグレナ 取締役 代表執行役員 CEO、リアルテックファンド 代表

イノベーターを突き動かす「アントレプレナーシップ」の正体

こうした高橋と長谷川の対話を受けて、永田は「何かを解決するためのアートはアントレプレナーシップだと僕は解釈する」と発言。「アート、サイエンス、アントレプレナーシップは言葉として分かれているから認知も分かれるけど、実際には不可分なもの。言語にするから分かれるけど、本人にしてみれば、やりたいことをやっているだけ」と前置きしたうえで、こう続けた。

「例えばユーグレナは東京大学の農学部発ベンチャーで、サイエンス×ビジネス、サイエンス×アントレプレナーシップの事例とされることが多々あります。僕も含め会社の仲間は、栄養問題とエネルギー問題を解決したいという思いから始まった会社と捉えていて、そのためにサイエンスが必要だから、研究者と手を組んだ。つまり、サイエンスドリブンではなく、目標ドリブンの会社なんです。これがアントレプレナーシップなのかもしれない、と僕は思っています」

では、起業家である永田や高橋にとってアントレプレナーシップとはなんなのか。

あらためて問いかけると、永田は「アーティストもサイエンティストもアントレプレナーも、内発的な衝動から自発的に進んでいる」と回答。

すると高橋は「自発的であって誰にも止められない、と永田さんが言いましたけど、それと同時にアントレプレナーシップは誰にも頼まれてないけど何かをすること、と私は思っている。何かに課題を見出せなければアントレプレナーシップは生まれません。自分なりの課題を見出すためには、教科書的で誰にとっても均一な経験だけでは不十分で、アートのように個を磨く経験がアントレプレナーシップを進化させるのではないでしょうか」と答えた。

永田は「ユーグレナは目標ドリブンの会社と話したけれど、目標を達成するための行為が自己表現であると考えれば、それはアートにつながっていくのかもしれない。高橋さんの言うように、誰にも頼まれていないけど自分の衝動としてやらずにはいられないものは、それはビジネスであってもアートであっても、すべて表現ということでひと括りにできる。アントレプレナーシップも、そこにつながっていくのではないか」と、セッションを締め括った。

終了後、セッションでは時間が限られたなかで語りきれなかった思いを問うと、長谷川は率直な感想を語ってくれた。

「アートのなかには、ビジネスにつなげやすいアートと、前衛的でビジネスとは切り離されてしまうアートがある。それらの多くは『お金にならない』という言葉で括られてしまうけれど、私は、そうしたお金にならない部分にこそ、社会にとって大事な問題提起が含まれていることもあると思う。だから、そういうアートをフォローしていくために、起業家として何かアイデアはあるか永田さん、高橋さんに聞いてみたかった。でも、セッションを通じてわかったのは、二人は生まれながらにしてアントレプレナーシップをもっているということでした。二人の言葉から、常に問題意識をもつこと。そして、目標を達成するためにはアート、ビジネス、サイエンスの枠にとらわれずに自由に自分の活動を広げていくことの大切さを学びました」

これまで、YAUはアーティストを支援するためのさまざまな活動を行ってきた。

22年2~5月に実施したYAU第1期では、オフィスビルの中にアーティストの共同スタジオを設置。まちとアートについての学びを深める「スクール」や、次世代を担う若手アーティストに専門家がアドバイスを行う「相談所」を展開し、アーティストがビジネス街の中で活動するベースを築いた。

第1期を経て、実行委員会は社会や経済との接点のなかでアーティスト支援を進めるには、目的やターゲットが異なる複数のプログラムを設けることが重要であるという検証結果を導き出した。

同年10月から始動した第2期では、そうした結果に基づき、大学や企業、団体とアーティストの連携をつくることに重点を置き、アートとビジネスの協働の可能性を探求している。「AET」はそうした流れの中で第2期から新たにスタートしたプロジェクトである。

今後予定されている第2回目のセッションでは、どんな登壇者がどんな気づきを与えてくれるのか、期待したい。
※イベントは終了しました。レポート記事はこちらからご覧いただけます。

YAU 有楽町アートアーバニズム
https://arturbanism.jp/


永田暁彦(ながた・あきひこ)◎慶応義塾大学商学部卒業後、独立系プライベート・エクイティファンドに入社。2008年にユーグレナ社の取締役に就任。未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。現在はCEOとして全事業執行を務め、健康寿命延伸を目指したリブランディング、脱炭素社会を目指すバイオ燃料事業、経営に10代を取り込む制度設計をするなど次世代経営を推進。また、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表としてファンド運営全般を統括する。

高橋祥子(たかはし・しょうこ)◎ゲノム研究者、起業家。京都大学農学部卒業。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士課程在学中の2013年にジーンクエストを起業した。経済産業省「第二回日本ベンチャー大賞」経済産業省大臣賞(女性起業家賞)、フジサンケイビジネスアイ「第10回日本バイオベンチャー大賞」日本ベンチャー学会賞など受賞歴多数。著書に『ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考』などがある。

長谷川 愛(はせがわ・あい)◎アーティスト、デザイナー。IAMAS卒業後渡英。2012年英国Royal College of ArtにてMA修士取得。14年から16年秋までMIT Media Labにて研究員、MS修士取得。17年から20年まで東京大学 特任研究員。19~21年早稲田大学非常勤講師。22年度は京都工芸繊維大学と愛知県立芸術大学にて特任教授。バイオアートやスペキュラティヴ・デザイン、デザイン・フィクション等の手法によって、生物学的課題や科学技術の進歩をモチーフに、現代社会に潜む諸問題を掘り出す作品を発表している。

Promoted by 三菱地所 / text by Ayano Yoshida / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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