1. Kaia Kaipe(カイアカイペ)
サンセバスチャンから車で海沿いを進むこと30分。一つ目の目的地であるカイアカイペは、魚介の炭火焼きが名物の小さな港町ゲタリアにある。
ゲタリアと聞いて美食家界隈で真っ先に名前が挙がるのは、ミシュラン一つ星や「世界のベストレストラン50」で16位(2021, 2022)を獲得している1964年創業の老舗Elkano(エルカノ)だが、筆者はカイアカイペの方がお気に入りだ。
どちらかというとエルカノがややかしこまったガストロノミックな雰囲気なのに比べ、カイアカイペには家族連れも入りやすい親しみやすさがある。
そもそも、カイアカイペとエルカノのオーナーは親戚関係にあり、創業時期もほぼ同じ(カイアカイペの方がエルカノより2年早い)。知名度が上がったエルカノは今や予約困難店となってしまったが、すぐ近くに同じクオリティの美味しさを誇るあんな素敵なレストランがあることを、もっと多くの人に知ってほしいのだ(予約困難になったらそれも困るが)。ちなみに、エルカノは港から少々離れているため景色の美しさは望めないが、海岸沿いにあるカイアカイペはゲタリア湾を一望できることも、筆者が推す理由である。
そして、ここで是非とも食してもらいたい料理の一つが、バスクの珍味ココチャ。あまり聞きなれない食材だが、これはメルルーサという白身魚のあご肉のことで、バスク州ではスーパーマーケットでも日常的に売っている魚の部位だ。
その食感はなんともエロティックで、牡蠣のようなプリプリ感とゼラチン質の蕩けるような舌ざわりが膨らませる美味しさは、思わず「お代わり!」と言いたくなってしまうほど。あまりにも好きすぎて、滞在先のアパルトマンで市販のものを調理したこともあるが、小さい部位のせいか火の入れ方が案外難しく、それ以来レストランで楽しむのが正解だと確信している。