同調査はフィンランドの科学者らによるもので、壁に植物を配置することが肌の状態や病原体・アレルゲンに対する免疫系の改善につながることを示唆した初の研究だ。論文は、科学誌サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)に掲載された。
フィンランドのタンペレとラハティの都会のオフィス環境で実施された同調査では、28人の労働者が対象とされ、壁を緑化した空気清浄作用があるオフィスで働く11人と、壁面が緑化されていない空間で働く対照群の17人に分かれた。
その結果、空気循環型の壁面緑化を行った空間で働いていた人は、対照群の労働者と比べて肌上の善玉菌の数や種類が増えていた。
こうした善玉菌は、肌が病原体や炎症と闘う上で役に立つもので、免疫反応を向上させる効果もある。このことから、壁に緑を植えた空間は、健康状態を改善する働きを持つ肌の微生物叢(そう)や免疫系に良い効果をもたらすことが示されている。
実験に使用された植物を提供したのはフィンランド企業ナーバ(Naava)だ。共同創業者のアキ・ソードゥンサーリは、衛生水準の向上と生物多様性の喪失により、人が自然と環境微生物に触れる機会は減ったと述べている。
「これが、自己免疫疾患やアレルギーが増えている主な理由の一つと考えられている」(ソードゥンサーリ)
調査の参加者らが壁面を緑化した空間にいたのはオフィスのみで、平日の間だった。壁面緑化の影響を調べるため、両集団の参加者からは肌と血液のサンプルが3回採取された。
研究科学者のマリア・ルスルンドは「自然に根差した比較的簡単な方法で健康を促進できことが結果から示されている」と述べた。また、世界でも手付かずの自然が残るフィンランドのラップランドで育ったソードゥンサーリは、人間は自然に触れる必要があるということに気づく人が増えることを願っている。
外壁の緑化にもメリットが
植物は、建物の外壁に設置した場合でも健康増進効果がある。外壁を緑化した場合、建物の冷却や屋外の大気質改善、市内の騒音吸収が可能になるのだ。
総合エンジニアリング企業アラップ(Arup)のディレクター、ルディ・ショイアーマンによると、外壁の緑化は都市部のマイクロクライメット(微気候)を改善する天然の解決策となる。ショイアーマンは、外壁と屋上の約20~30%のみを緑化するだけでも市街地の気温が大きく改善すると述べている。
また、屋内の壁を緑化することで人々の生産性も向上し、空気中の有害物質の排出量が相殺される可能性もあると指摘したショイアーマンは、「壁面の緑化に真剣に取り組み、植物が務めを果たすための十分な空間を与えれば、良い影響があるだろう」と述べた。
(forbes.com 原文)