海外

2023.01.24

中国発の新興アパレルSHEIN、評価額3割減か

Getty Images

中国発の新興ファッションブランド「SHEIN(シーイン)」は、昨年4月時点よりも3割以上低い評価額で最大30億ドル(約3900億円)の調達交渉を進めているもようだ。テック系スタートアップの間では、市場環境の変化に対応して、前回を下回る評価額で資金調達する「ダウンラウンド」を受け入れる例が相次いでいる。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、新たなラウンドでのSHEINの評価額は640億ドル(約8兆3300億円)。昨年4月に実施した直近のラウンドでつけたピークの1000億ドル(約13兆円)あまりに比べ3分の2弱の水準になる。当時、SHEINは米ニューヨーク市場での新規株式公開(IPO)が取り沙汰されていた。

事情を知る複数の人物の話としてFTが伝えているところによると、SHEINはアラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系ファンドであるムバダラ、米大手ベンチャーキャピタル(VC)セコイアの中国法人セコイア・チャイナ、米プライベートエクイティ(PE)ファンドのジェネラル・アトランティックといった既存投資家との間で、新たな資金調達ラウンドの完了に向けて交渉に入っている。

評価額の引き下げにともない、各社の持ち分比率は高くなる。ラウンドは向こう数か月で完了する見込みだという。

SHEINはFTの報道について「事実関係に誤りがある」としているが、詳しい説明はしていない。

株価低迷するアジアの新興ECサイト

前回の資金調達ラウンド時、SHEINは株式未公開企業としては動画投稿アプリ「Tiktok(ティックトック)」運営のバイトダンス、イーロン・マスクの宇宙開発企業スペースXに次ぐ高い評価額を得ていた。だがその後、世界のVCコミュニティーは鳴りを潜め、IPO市場もほぼ閉鎖された。その結果、多くのテック系未公開企業が資金調達に苦しむようになっている。

報道どおりSHEINの評価額が3分の1引き下げられたとしても、テック系新興企業の企業価値をめぐる最近の動きとしては異常なものではなく、むしろ落ち込みが比較的抑えられたケースだと言える。

たとえば、中国のEC(電子商取引)市場でアリババ集団の「淘宝網(タオバオ)」の支配に挑んでいる拼多多(ピンドゥオドゥオ)の場合、2021年2月に2400億ドル(約31兆円)あった時価総額が足元では半分以下の約1000億ドルまで縮小している。

また、シンガポールに本社を置き、東南アジア各国でECサイト「Shopee(ショッピー)」を運営するシーも2021年11月以降、時価総額を80%超失った。Shopeeは昨年後半、3度にわたるレイオフ(一時解雇)を通じて従業員を約7000人削減している。

SHEINは許仰天(クリス・シュー)最高経営責任者(CEO)が中国の南京で創業。通販サイト経由で世界各地に商品を販売し、ファストファッション市場を席巻している。昨年の売上高は300億ドル(約3兆9000億円)に達したと推定されている。昨年11月には世界初の常設店を東京に開設した。

本社は昨年シンガポールに移転させた。複雑で制約の多い中国のIPO規則を避ける狙いがあるとみられる。今年の早い時期に米国でIPOを行うと広く予想されている。

forbes.com 原文

編集=江戸伸禎

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