見えてきた本当のニーズ
持参の手間がかかることから持ち込みは少なくなる予想をしていたが、予想以上の回収があった。
開催してみると、思いのほか反響があった。2022年11月、会場の梅小路公園七条入り口広場には1万2000人が来場、1300kgの古着を一日で回収する結果となった。
無料お持ち帰り用として用意した古着は、2500点中1900点が持ち帰られた。老若男女が参加したことで、用途や価値観はさまざまに、満遍なく幅広い種類の古着が循環することとなった。
1000件ほど集まったアンケートでは、「ファッションロスに興味があるか?」という質問に対し、ほとんどの人が「興味がある」と回答。服を手放すことに困った経験があるという意見が多かった。
イベント会場の盛り上がりから、リユースのさらなる可能性が感じられる
「古着を提供してくださる方々は“まだ着られるのにもったいない”という気持ちで、手放した服をまた誰かに着て欲しいんですよね。商業ベースでは、回収した古着を原料に戻すというようなリサイクルもありますが、私はもっとリユースを広げていきたいと思っています」
「これからは、新品を販売するプレイヤーにも古着を取り扱ってもらえると、古着のマーケットを広げることになる。利幅がすごく高くてキャッシュフローも楽だとか、ビジネスとしての古着のメリットにも気づいてもらえるといいですね」
自立分散型の開催を目指す
循環フェスではオープンに協働者を募集しており、イベント開催後には多くの問い合わせがあったという。今後について岩崎氏は、小規模の自立分散型で、各地域で開催されることが理想だと語る。「京都市内だけで950カ所の公園があるので、各公園で月1回 不用品の回収や交換をするイベントもやりたいと考えています。例えば、教育の一環として子どものおもちゃや絵本を子どもたち自身が販売するなど。回収した物品の分別までを地域内でやることで、仕事や役割が発生するので、対価をお支払いすることで、地域に利益が生まれるようになったらいいですね」
さらに、不要衣類の回収BOX「リリース・キャッチ」を、京都市の小・中・高等学校すべてに設置するという夢も持つ。学校で資源ゴミの回収と選別をすることで、子どもたちの意識の変容を目指す。「これからの未来を担っていく子どもたちに、洋服を循環させる価値観が根付いていくと未来は面白くなっていきそうだ」と語る。
「今は洋服のみですが、衣食住エネルギーと、いろいろなプレイヤーがどんどん入ってきてもらって、循環フェスをうまく使って欲しいです」
循環フェスはさらにその裾野を広げ、取り組みを加速させていく。新時代のリアルイベントのモデルケースとして、今後の活動にも注目していきたい。
岩崎 仁志(いわさき・ひとし)◎ヒューマンフォーラム代表取締役社長。アパレル小売ブランド「SPINNS」、「mumokuteki」、「森」など約70店舗を全国展開。ファッションを通してその人らしさの表現や、豊かな生き方、暮らし方を提供する。2022年9月より、京都市を中心に循環フェスや、地域事業者による不用品の回収と循環インフラ構築事業「RELEASE⇔CATCH(リリース・キャッチ)」を開始。