サステナビリティ、リジェネラティブといった概念を浸透させる際など、意識の変容を促す体験は重要な役割を持つ。では、これからの時代に新しい価値観を広げていくため、どのような体験の設計が必要なのだろうか。
2050年までにCO2排出量を正味ゼロとすることを掲げ、その意欲的な取り組みが注目を浴びる京都。そこで大規模リユースイベント「循環フェス」 が新たに始まった。今回は、このイベントの設計を見ていこう。
地域で広げる新しい循環の輪
2021年9月、京都市は2050年に向けた脱炭素型のライフスタイル像や、それを実現するための目標・アクションを創るため「京都発脱炭素ライフスタイル推進チーム~2050京創ミーティング」を発足した。同チームには事業者や学識者だけでなく、若者を中心とする市民も参加し、一人ひとりの生活の中での選択が脱炭素につながるプロジェクトを創出している。その中で、不要になった衣服を回収する回収BOXを設置し、循環させるプラットフォーム「RELEASE⇔CATCH(リリース・キャッチ)」が始動。循環フェスは、同プラットフォームのスタートイベントとして開催された。
京都市内を中心に150箇所以上設置されている不要衣類の回収BOX「リリース・キャッチ」
イベントでは、京都市内で回収・選別した古着を3点まで無料で持ち帰れる「¥0Market」、フリーマーケット「循環Market」やマルシェ「循環フェス Natural Marche」、トークイベントなどを開催。どれだけ服が循環されたかを計測し、それによる二酸化炭素の削減量を算出して可視化した。
同イベント主催者の岩崎仁志氏によると、この循環フェスは、「不用品の回収」とそれを「0円で提供してみた場合どのようなことが起きるのか」という、社会実験だった。
「0円での提供は、当初周囲から反対されました。でも、現在の貨幣の対価として物品を交換する“流通”の価値観の外にある感覚をどうしても表現したかったんです。不必要になった人から必要な人へ、世代を超えて物が循環していって、手放すだけでも持って帰るだけでも大きな循環の輪の中にいることを感じてほしいと思いました」
左から、京都信用金庫常務理事 竹口尚樹氏、ヒューマンフォーラム代表取締役 岩崎仁志氏、京都市市長 門川大作氏