塗料、食缶、配管、自動車用燃料に含まれる鉛を取り除く米国の政策は、過去40年間に子どもたちの鉛曝露量を大きく減らしてきたが、鉛は現在でも航空ガソリンの添加物として使用されている。航空ガソリンに含まれる鉛は、エンジンの故障を防ぐのに役立っている。
米国では、ピストンエンジン搭載機から50万ポンドの鉛が大気中に排出され、土壌に蓄積されると研究者は推測している。環境保護庁によると、ピストンエンジン搭載機を使用する空港から500メートル以内にある小学校は600校にのぼる。
特に、成長著しい子どもたちは、鉛汚染の影響を受けやすい。鉛は神経毒として悪名高く、特に6歳以下の子どもには注意が必要だ。鉛の血中濃度が低くても、子どもに害をおよぼす可能性がある。鉛中毒の症状としては関節痛、頭痛、だるさ、疲労感、胃痛、便秘、イライラなどがある。
米疾病対策予防センターによると、幼少期に鉛にさらされると脳や神経系へのダメージ、成長・発達の阻害、学習・行動障害、聴覚・言語障害などを引き起こす可能性があるとのことだ。
本研究の主執筆者であるサミー・ザーランらは、2011年から2020年にかけて、カリフォルニア州サンタクララ郡のリード・ヒルビュー空港から半マイル離れた場所に住む5歳未満の子どもたちの血中鉛サンプル1万4000個を分析した。
長年にわたり、研究チームはピストンエンジン搭載機の交通量が増加した場所で、空港に近接する子どもたちの血中鉛濃度が上昇することを観察した。空港の風下に住む子どもたちの血中鉛濃度は最も高かった。カリフォルニア州公衆衛生局は、1デシリットル当たり4.5マイクログラムの鉛を基準値と定めている。しかし、空港の隣に住む子どもほど、血中鉛濃度はその閾値を大きく超えていた。
航空機の交通量が過去最低となった2020年の間に、子どもたちの血中鉛濃度が大幅に低下していることがわかった。一方、空港から1マイル以上離れた場所に住んでいた子どもたちは、半マイルまたは500メートルしか離れていない場所に住んでいた子どもたちに比べて、血中鉛濃度が21.4%低かった。
「一連のテストを通して、我々は、空港の近くに住む子どもたちの血中鉛レベルが、有鉛航空ガソリンの沈着によって押し上げられるという一貫した証拠を発見しました」と、ザーランはPNAS Nexusのプレスリリースで述べた。「このことは、リスクのある子どもたちを守るために、航空からの鉛の排出を制限する政策努力を支持すべきことを示しています」
さらに研究者たちは論文で「鉛は健康への影響がない最低血中濃度を示さないようであるため、航空機から鉛排出の削減または排除には説得力がある」と全米アカデミーズが発表した声明を強調した。
(forbes.com 原文)