日本人が「世界で戦えない」理由
しかし、いざ米国でビジネスを始めると、商習慣の違いに直面する。そのひとつが、交渉の仕方だ。「日本では、言葉に出さずとも、最初からある程度最終的な妥結点が見えていて、2~3回やり取りすれば合意に達することが多い。でもアメリカでは、最初に高い球を投げて交渉のベースを上げ、そこから徐々に落としどころを見つけていく。日本人はそのテクニックを知らないから、最初から手の内を見せてしまうんです」(川原)
これまでにも日本の数々のコンテンツが海外進出を果たしているが、本来のよさが生かされていないケースをたびたび目にしてきた。日本一になれても世界では戦えない―。その原因は交渉術にあることを、川原は痛感した。
海外進出をゴールと捉えているから、その先の展開を見据えずに、かたちにしたい一心で不利な条件をのんでしまうのだ、と。だからこそ、こんまりメソッドの伝え方は絶対に妥協したくないという思いがあった。
前述のNetflixの番組制作をめぐっても、その姿勢を崩すことはなかったという。
「僕らにとってアメリカ進出はゴールではなく、ひとつの通過点にすぎない。僕らが本当に目指していたのは、こんまりメソッドを本来のかたちで、ひとりでも多くの人に伝えていくこと。それが受け入れられないなら、企画が流れても構わないという強い姿勢で交渉に臨みました」(川原)
前作から約2年半の時を経て始まった新しい劇的改造シリーズ「KonMari “もっと”人生がときめく片づけの魔法」。仕事と家庭の両立に悩む人たちに、近藤がときめきあふれる片づけ術を紹介する。Netflixで独占配信中。
実に2年に及んだというNetflixとの交渉。特に「どの程度内容の決定に関与できるのか」というクリエイティブコントロール面と、「どの国や地域で何年まで放映されるのか」という権利面については一歩も引かなかった。あまりにタフな交渉に相手側が音を上げて、一度話が白紙になったという。
「そんなに要求を貫こうとすると、チャンスを逃してしまう、と周囲に忠告されたこともありました。でも、本当に価値のある企画なのだから相手も手を引かないだろうという確信がありました」(川原)
ここから2人の本当の戦いが始まる──。VCと向き合い、緻密な戦略を立て、新たなミッションを掲げて動き出した川原と近藤。エミー賞獲得、著書1000万部超という夢をいかにして現実のものとしていったのか? インタビューの続きは、本日発売の『Forbes JAPAN』3月号にてお読みいただけます。
近藤さん衣装:ブラウス¥374000、スカート¥231000(ジョルジオ アルマーニ/ジョルジオ アルマーニ ジャパン 03-6274-7070)、ピアス¥35200(ジジ/ホワイトオフィス 03-5545-5164) 川原さん衣装:スーツ¥418000〜※オーダー価格(ジョルジオ アルマーニ/ジョルジオアルマーニ ジャパン 03-6274-7070)、シャツ・スタイリスト私物