日本の農業は、少子高齢化による農業従事者の減少が大きな課題となっている。国内の個人経営体の基幹的農業従事者は、2015年には175万7000人いたが、2020年には136万3000人と39万4000人(22.4%)減少。この基幹的農業従事者のうち65歳以上が占める割合は69.6%で、5年前に比べ4.7ポイントも上昇した(出典:農林水産省「2020年農林業センサス」)。このままいくと食料生産力や農作物の国際競争力も激減するのは明らかだ。
このような状況下、生産性の高い効率的な農業の仕組みの構築と農作業の省力化が急務であり、現在国内の多くの自治体、団体、企業等による革新的なスマート農業の取り組みが進んでいる。その一つが、NTTグループが強みとするICT技術を活用した農業を実践・展開するNTTアグリテクノロジーである。
未経験者が遠隔指導で高品質のトマトを生産
NTTアグリテクノロジーと東京都農林水産振興財団、NTT東日本の三者は「ローカル5Gを活用した最先端農業の実装に向けた連携協定」という3カ年プロジェクトを2020年から開始した。このプロジェクトは、東京発で日本の未来の農業を支えるモデルケースの創出を目指すもの。具体的には、ローカル5Gを整備した最先端ハウスを東京都調布市に設置し、トマト栽培を行っている。超高解像度カメラやスマートグラスなどを活用し、栽培未経験者に遠隔での技術指導を実施。ハウス内の温度やCO2濃度などをセンサーで計測しながら全自動でハウス内の環境を制御、作物の最適な光合成を実現する。
品質や収量を安定させるために行う生育調査作業の効率化を目指し、スマートグラスとARを組み合わせた最先端技術を開発した。計測や集計作業を自動化する。
プロジェクト開始から約3年が経過した現在、NTTアグリテクノロジー設立のコアメンバーであるNTT東日本経営企画部の中西雄大氏は「栽培未経験者が遠隔で指導を受け、高品質のトマトの栽培に成功しました。さらに2年目からは収穫量も増加し、大きな手応えを感じています」と言う。生産したトマトは調布市内で販売されたり、市内の小学校に提供されたりしており、地産地消を実現している。