Amazon(アマゾン)は、CES 2023のアマゾンエクスペリエンスエリア(アマゾン体験コーナー)で、アンビエントスマートホーム技術をお披露目した(「アンビエント」とは「周囲から包み込む」といった意味)。同社が今月中に、Alexa Ambient Home Dev Kit (AAHDK、アレクサアンビエントホーム開発キット)の最初の3つの機能(認証情報の共有、グループ同期、双方向デバイス同期)を開発者プレビューとしてリリースすると発表したのだ。イベントで発表されたAAHDKは、アマゾン・アレクサのエコシステム内のサービスやAPIを統一するための開発キットだ(発表時に私のポッドキャストでも取り上げた)。
AAHDKの発表は、アマゾンが最近スマートホームの業界標準であるMatter(マター)を採用したことに続くものだ。Matterがスマートホームをどのようにスマート化するかについて説明したMoor Insights & Strategy(ムーア・インサイツ&ストラテジー)の調査記事にあるように、Matterは、多くの家庭ですでに利用されているネットワークを介した、スマートホームデバイス通信用の世界共通「言語」だ。アマゾンは、同社のスマートホームデバイスに対するMatterの展開の第一段階を完了したと発表した。なぜスマートホームの分野にとって、アマゾンがMatterをサポートすることが重要なのかを見てみよう。
Matterそのものはきわめて新しい規格だが、アマゾンは長年にわたりスマートホームデバイスのエコシステムを成長させてきた。アマゾンのアレクサエコシステムが成熟していることを考えると、同社は顧客の家庭にすでにある1億台以上のEcho(エコー)デバイスにMatterのサポートを導入することになる。アマゾンの戦略は、eコマース事業と同様に、家庭用IoTデバイスのエコシステムを構築し、開発者と顧客がアレクサプラットフォーム上で独自の製品を構築できるようにすることだ。家庭用機器の開発者は、今回のAAHDKの新機能を使って、まさにそれを実現することができる。
Matter対応機器と簡単に連携できるようになったことは、アマゾンのスマートホームエコシステム全体にとって良いことだが、Matter機器の流入が既存のアマゾンの技術の価値を希薄化しないことも重要だ。アマゾンはRing(リング)やEchoといった自社のアレクサデバイスを持ち、開発者やパートナーデバイスによるアレクサエコシステムを抱えていることを思い出して欲しい。アマゾン・アレクサのエコシステムがMatter対応デバイスと接続しつつ、アレクサエコシステム自体の統一性、セキュリティ、シンプルさが維持されることが非常に重要だ。