経済

2023.01.22

ロシアとイラン、制裁回避で暗号資産を使った貿易決済を検討中

Getty Images

ロシアとイランは二国間の貿易取引に使用できる、金を裏づけとした新しい暗号資産(仮想通貨)を立ち上げる計画を協議している。

このニュースの前には、2022年8月にイランが国際決済システムを回避し、米ドルの使用を避ける方法として外国との貿易取引を暗号資産で決済する計画が明らかになっていた。少なくとも1件の貿易取引は暗号資産で決済されたが、この仕組みが広く使われているかどうかは不明だ。

ロシアの経済新聞ベドモスチが1月16日に報じたところによると、ロシア議会の情報政策・IT・通信委員会の委員アントン・トカチョフは、この問題に関する交渉は続いているがクリアすべき規制があると述べた。

ベドモスチはまた、ロシア暗号資産・ブロックチェーン協会事務局長アレクサンダー・ブラジニコフの、暗号資産は金準備に裏づけられた「ステーブルコイン」として開発されるだろうとの発言を報じた。

ステーブルコインは商品または法定通貨に紐づけることで、ビットコインなど他の多くの暗号資産の価値に見られる変動を回避するように設計されている。だがリスクがないわけではない。2022年5月、TerraUSDアルゴリズムのステーブルコインの価値は投資家による大量の引き出しにより暴落した。オーストラリアの中央銀行であるオーストラリア準備銀行は同年12月に発表した報告書の中でステーブルコインが抱えるリスクを強調した。

ロシアとイランの試みは従来の通貨に代わって二国間貿易の決済に新しいステーブルコインを使用するというものだ。両国はともに米国の制裁下にあり、米ドルの使用が難しい。ロシアの場合は昨年2月のウクライナ侵攻、イランの場合は核開発問題などを理由に制裁を受けている。

ロシアとイランは昨年、自国通貨による貿易決済システムを立ち上げ、7月19日に最初の取引が行われた。これは国際的な取引を行う際に幅広い通貨を使用することを検討する各国にみられる多様な傾向の一部だ。

ロシアはまた、中国との貿易決済でルーブルと人民元の利用を拡大している。そして直近では、サウジアラビアのモハメド・アルジャダーン財務相が米ドルへの依存度が高い状態から脱却することを検討する用意があると述べた。

スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムの際、アルジャダーンは1月17日にブルームバーグ通信に対し「米ドルであろうが、ユーロであろうが、サウジリヤルであろうが、貿易決済の方法を議論することに問題はない」と言明した。「世界中の貿易を改善するのに役立つ議論を払いのけたり、排除したりはしないと思う」とも述べた。

Kinesis Money(キネシスマネー)の最高商務責任者ジャイ・ビフルコは、イランやロシアに追随する国が現れるかもしれないと予想している。「おそらく金ベースのステーブルコインを貿易に使用するという国家間の合意が増える可能性が高い。結局のところ、中国、イラン、ロシアのような国は米ドルの覇権を終わらせるという明らかな動機を持っている」と述べた。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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