ソニーのメタバース技術、“仮想空間”をコンシューマの手元へ

“仮想空間”のアウトプットも多方面に

ここで紹介したのはCES 2023で展示、デモが行われた技術だけだ。映画制作に活用するもっと進んだ技術もあれば、ゲーム制作の中で得られている知見など、ソニーグループの中には多くの仮想空間データを入力、活用する技術がある。

それらはクリエイターに有益な技術を提供することを重視してきた背景からくるものだが、ソニーにはもうひとつ強みがある。

それはエレクトロニクス企業として、仮想空間データをアウトプットする技術も持っていることだ。

前述したマンチェスターシティ向けに開発されたアプリケーションでは、最終的なアウトプットは2Dディスプレイだ。スマートフォンやタブレットなどで、自由に視点を切り替えながらコンテンツを楽しみ、イベントに参加する。

しかし現在は専用アプリを使っているものの、将来的には仮想空間を表現するデータを時間軸の変化に同期してストリーミングできるデータ形式を標準化していく構想があるという。データ形式が標準化されれば、ネットを通じたストリーミングで、さまざまな機器が仮想空間データにアクセスできる。

例えばVR表示デバイス(それこそPlayStation VR2でも、Meta Quest2でも構わない)で、前述のマンチェスターシティのサービスに接続し、より没入感のある体験を得ることも可能だ。

また15.4インチモデルが実用化されている「空間再現ディスプレイ」の27型試作モデルも会場に展示されていた。簡単にいえば裸眼のまま高精細な3D映像を、視線位置を変えながら覗き込むように眺めることができるという特殊なディスプレイ。驚くばかりの品質なのだが、27型になったことで体験の質が数段向上する。

3D設計データの共有や医療測定データの確認などの用途もデモされていたが、もちろん、メタバース的なデータのアウトプットとしても活用できる。実際、ホークアイが捉えたサッカーの試合における選手とボールの動きを箱庭を覗き込むように観察できる体験は、かなり新鮮なものだった。
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