起業家

2023.01.24

「熱狂」とテクノロジーで課題解決 ミレニアル女性のキャリアを支援

SHE CEOの福田恵里

「私たちは単なる女性向けのキャリアスクールで終わるつもりはありません」。SHEのCEO、福田恵里がそう強調する。

ミレニアル世代の女性を対象に、複数のキャリアサポート事業を展開するSHEは、2017年の創業から右肩上がりに売り上げを伸ばし、22年は前年比163%の26億円を見込む。4年間で累計会員数は6万人を突破。約18億円の資金調達を実施し、勢いに乗る。

メインサービスの女性向けキャリアスクール「SHElikes」は、入会金約15万円、月会費約1.5万円のサブスクリプションモデル。特定の資格取得を目指して入会する従来のキャリアスクールとは異なり、ウェブデザインやプログラミングなど32ものコースから受け放題で、コーチングなどを通して自身のマインドにも向き合えることが特徴だ。

「初心者で自分は何が向いているのか正直わからない。いろんな職種を体験してから自分の好きなものを見つけたい」。そんなミレニアル世代の女性たちの気持ちに寄り添う。

創業当初はコワーキングスペース事業から始まったが、福田が学生時代から教えていたウェブデザインやプログラミングのスクールも始めたところ、ニーズとマッチした。女性にはなじみの少なかった分野だが、デザインの凝った教材の作成や、サブスクモデルの導入でさらに多くの女性の支持を集めるようになった。

強みは、会員たちがつくるコミュニティの「熱狂」だ。「SHEで転職して人生が変わった」「スキルだけでなく、価値観が変化した」。毎月9000件以上、「熱い」口コミがSNSにあがる。

会員の多くは平均年収300万円台といわれる20-30代の女性たち。講師やスタッフの多くは、実際にキャリアアップやキャリアチェンジを実現したロールモデルでもある。

「講師と生徒という上下のある関係ではなく、球体型のコミュニティを目指してきました。誰もがコミュニティに貢献しているという感覚をもてる居心地のよい関係性です。講師たちも女性誌で見るような遠い存在ではない、手が届きそうな存在。そういう『斜め上のロールモデル』の刺激を受けることが重要なんだと思います」(福田)

20年に始めた「SHEcreators」では、SHElikesで学んだ受講生に、仕事をあっせん。スクール事業からキャリア形成まで、女性たちの人生により長く寄り添える伴走者を目指している。

福田自身も2児を育てる同世代の女性だ。CEO就任後に産休、育休も取得した。将来的に挑戦したいのは義務教育のアップデートだと話す。

「SHEでやってきたことは大人の価値観の変革なんです。『自分も変われるんだ』という自己効力感を得ること。SHEに来たときは自己肯定感が低かった人も、スキルを身につけて自分の選択肢を広げられる。その経験が自信になる。

いまの時代を生き抜くには、正解を見つけるのではなく、自分自身で道を正解にしてしまうような生きる力が必要です。そういう力や自信を子どもにも身につけてほしい。そこにSHEが一役買えたら」(福田)

目標は貪欲だ。24年には「売り上げ87億円、時価総額1000億円以上でIPO」を掲げる。「本気で起業家ランキングの表紙を取りに行きます」。

文=成相通子 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.101 2023年1月号(2022/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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