日本特有のフードロス問題とは 「寛容度」が必要な理由

Unsplash/Alison Pang

おいしいを測るデジタル技術が、食の商品開発をサポート

売れる商品を効率的に企画できるシステム「FOODATA」を構築した伊藤忠商事は、デジタル技術で、食品・飲料メーカーの商品開発に変革を起こしています。

このシステムは、うまみ、味の濃さなど多様な味覚と栄養、原材料などを数値で可視化し、同社が持つ最大800万人分の消費者の行動や嗜好に関するデータと掛け合わせて分析します。これにより、エビデンスに基づいた商品開発を行うことができるようになった食品・飲料メーカーは、消費者の多様なニーズを的確にとらえた商品を、短期間でスピーディーに市場に投入してくことができるようになります。消費者の好みと商品のミスマッチを防ぐことで、フードロスの削減に間接的に貢献しています。

日本政府の取り組み

2019年に、フードロス削減を推進する法律が制定されて以来、農林水産省は、「3分の1ルール」の緩和と納品期限の見直しの徹底を食品業界の経営層に働きかけています。2021年10月に行われた調査によると、食品スーパーなど186社の小売事業者が納品期限を緩和したことが分かりました。

また、文部科学省は、学校給食を通じてフードロス削減の取り組みを進めています。栄養バランスの取れた食事を提供することで、子どもの健康増進と食に関する指導を効果的に進めるための「生きた教材」として、大きな教育的意義を持つ学校給食。これまで廃棄されてきた規格外農産物を、調理法を工夫することで学校給食に活用できるようにしたり、地場産物を食材に取り入れたりすることで、フードロスの削減と地産地消を同時に実現しています。こうした取り組みが、子どもたちにとって食の大切さを学ぶ機会となっています。

消費者のアクションが、サステナブルな食の未来を作る

地球が抱える最重要課題として、気候変動に対する危機感は高まっていますが、フードロスが気候変動を起こす温室効果ガスを排出する大きな要因となっていることは、あまり認知されていません。フードロスは、燃焼処理すれば二酸化炭素を、土に埋めた場合には二酸化炭素の25倍以上温室効果の高いメタンを発生させます。食品ロス由来の温室効果ガスの排出量は、全体の8%〜10%を占めるとIPCCは報告しており、これは、自動車からの排出量とほぼ同じ量なのです。

サステナブルな食の未来の構築には、法律や制度の整備、事業を通じた取り組みが必要不可欠であることは言うまでもありません。しかし、フードロスの根底にある要因は、私たち消費者の意識や消費行動です。このことを認識し、一人ひとりが日々の暮らしで食のムダをできる限り減らすアクションを心がけることが、最も大きなインパクトを生むでしょう。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Naoko Kutty, Digital Editor, World Economic Forum

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