筆者は、アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾスに関する新著執筆に向けた調査中に、同社では管理職を含む従業員に対し、8年生(日本の中学2年生に相当)前後のレベルの文章を書くよう指導していることを知った。
また、ベゾスがアマゾンの最高経営責任者(CEO)として書いた全24通の株主宛て書簡(ワード数の総計は5万語近く)を分析したところ、非常に興味深い傾向があることが分かった。同社の事業規模が拡大し複雑になるにつれ、書簡の内容は読みやすくなっていたのだ。グラマリー(Grammarly)などの文章校正ツールに全書簡を読み込ませたところ、その70%が13~15歳相当の教育を受けた人の大半にとって「読みやすい」と判定された。
ここで重要なのは、中学生が読めるからといって、こうした文章やプレゼンが中学生のように聞こえるわけではないことだ。これは単に、オーディエンスが内容を理解するのに費やすエネルギーが少ないことを意味している。
ものごとを理解しやすくすれば、オーディエンスの満足感は高まる。満足したオーディエンスは、あなたの商品を購入したりアイデアを支持したりする可能性が高くなる。
難しい内容を短い単語で表現
ベゾスが文章を簡潔化するため使う戦略の一つは簡単に実践できるもので、議題が技術的だったり複雑だったりする場合に特に効果がある。ベゾスは、難しい内容を表現する時、短い単語を使う。2007年にキンドルについて記した以下の段落は、ほぼ全てが1~2音節の単語で構成されていた。
If you come across a word you don’t recognize, you can look it up easily. You can search your books…If your eyes are tired, you can change the font size. Our vision for Kindle is every book ever printed in any language, all available in less than 60 seconds.
(知らない言葉が出てきたら簡単に調べることができる。本を検索できるし、目が疲れたらフォントの大きさを変えられる。キンドルについての私たちのビジョンは、どんな言語で出版された本でも60秒以内に手に入れられるようにすることだ)
ダニエル・カーネマンも著書『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?』で「信頼できる人や知的な人だと思われたいなら、簡単な言葉で済む場面で複雑な言葉を使わないこと」と記している。どの単語を使うべきか迷ったら、短いものを選ぶこと。