20数年前に大学を卒業した筆者は、当時の大手企業の女性の総合職の採用人数は男性の数分の1から10分の1程度であったと記憶している。同じ大学卒の同級生(男性)が財閥系の企業の内定を獲得する中、女子学生は企業を受け続けていた。
「ジェンダー視点による仕事選び」マップによると、稼ぎたければ、出世したければ、日本では女性は外資に行くしかない、というのが現実で、過去20年間はそれが顕著だった、といったところか(例外やプラチナ中のプラチナチケットを手に入れた超ラッキーなケースを除く)。
こうした企業の現状を伝える本は、四季報などのように新しい情報とともに改訂を繰り返す類の出版物なので、次の版が出る際には、すべてのマップに女性に関する情報や裏マップ(例えば報酬水準マップの企業名に正社員の男女比率を明記するなど)が付記されていることを希望したい。そうすることで、女子学生や働く女性が就職・転職を考える際により実用的なガイドになると思う。
「知的ブルーカラー企業」から「ガチの成果主義企業」へ、は可能
余談であるが、筆者は新卒当時、外資系に就職するような意識が高い学生ではなかったので、女性にはガラスの天井があり選択肢が限られているということに無知なまま、「知的ブルーカラー企業」で週休1日かつ薄給で働き続けることになった。その後転職し、英語をガチで勉強して過去10年間ほどは外資系企業のグローバルチームで唯一の日本人として働いている。自身の経験に照らすと、少なくとも「知的ブルーカラー企業」から「ガチの成果主義企業」に移ることは可能であるようだ。
本書では、かなりのページを割いて総合職の全国転勤制度が女性の人生の選択に与えてきた影響などについて言及している点はフェアであると感じた。日本では、女性には残念ながら男性と同じゲームのルールが適用されない。時代は変わってきてはいるかもしれないが、その速度はとてもとてもゆっくりで、東京だけではなく全国を見渡すと、例外的なケースを除き、女性というだけで、かなり限られた中からしか有意な職業選択はできなくなってしまうのが、悲しいかな、現状だ。
筆者は、30年前からこの企業に関する情報を追ってきたとのことだが、今後10年、20年の分布がどうなって行くかについて、男女差のトレンドも含め、追い続け、発信していただきたいと思う。
『「いい会社」はどこにある?』(渡邊正裕著、ダイヤモンド社刊)
高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系大手エンタメ企業勤務。