今回さらにジョブ型雇用を拡大させたのは、そういったこれまでの成功体験が理由にある。久元市長も「民間企業からの転職者からもたらされた知識と経験が、うまく市の職員に伝わった。両者でチームを組んで実績をあげてきた」と説明する。
ジョブ型雇用ではあるが、人事異動や昇進も想定している。将来は局長級となって、市の舵取りを担う人材になる可能性もあるという。
公務員の給料は転職市場で戦えるのか
神戸市のような自治体が優秀な人材を獲得するには、民間企業との真っ向からの競争は避けられない。実は、昨今のSDGs(持続可能は開発目標)への関心の高まりは、公共性の高い職場で働くことへの追い風となっている。そのようなこともあり、神戸市は市の仕事を知ってもらう取り組みもはじめている。
まず大学生には、「雇用型インターンシップ」として、3カ月から4カ月の間、週2日の出勤で給料が支給される職員として、市役所で勤務する制度を新設する。職場の雰囲気を知ってもらいたいからだ。外資系企業などでは採用手続の一環としておこなわれているが、神戸市では正規の採用とは切り離して考えるという。
次に社会人には、「社会人1day インターンシップ」として、民間企業から神戸市に転職してきた職員との座談会を開き、転職した人間のナマの声が聞ける機会をつくる。
記者会見をする久元喜造市長(2022年12月22日)
前出の12月22日の記者会見では、転職者の給与など処遇への質問も相次いだ。民間企業との人材の争奪戦になれば、これまでの公務員の給料では十分ではないと考えられるからだ。
久元市長は「転職してきたという理由だけで待遇が良くなるのは不公平感を生む。ただ一方で、かなり専門的な知識がいるポストであれば、特別な取扱いをする可能性がある」とあくまで現行の枠組みのなかで考えていきたいということだ。
確かに公務員には、社会貢献につながる仕事ができるというやりがいはある。なので、前職での高い報酬を捨てて、公務員へと転職する人材も少なからず存在している。
人事制度の入口を大きく変えようとする今回のチャレンジで、はたして優秀な人材を集めることができ、神戸の街に輝きをもたらせるのだろうか。その成り行きには、自治体だけでなく大企業からの注目も集まりそうだ。