このような恐ろしい傾向の背景には、中国の経済と金融市場が直面している、より根本的な2つの問題がある。そのうちの1つが迫り来る人口問題だ。中国では数十年にわたって一人っ子政策が取られたため、大量の退職者を支える若い労働力が不足しており、この問題は今後深刻になるばかりだろう。
ピュー研究所の推計によると、中国の人口はすでに減少に転じており、近い将来、退職者1人に対して生産年齢の人数が3人以下になるという。この3人が必要とされる余剰金を生み出すことはできないため、政府は社会保障年金の責務を果たすために借金しなければならない。
さらに根本的なことをいえば、おそらく中国の債務は共産主義的な経済運営の本質を反映している。
多様な主体が多岐にわたる投資を行う主に市場原理のシステムとは異なり、国有企業に独占されている中央集権的な方向性に依存する中国は、経済資源を少数の壮大な計画に注ぐ傾向がある。そのため、これらの計画が成功すればすばらしい成果が得られるが、基本的な経済ニーズに応えられなかった場合には、損失とそれにともなう債務が膨大なものになる可能性がある。
最近の不動産開発の失敗がその例だ。確かに民間企業も関与しているが、それでも失敗の規模は中央で計画を立てる者たちが以前、住宅建設をかなり重視していたことを反映している。
実際、最盛期には住宅建設は経済の30%を占めるという桁外れの規模だった。中国はその後方向性を変えたかもしれないが債務は残っており、失敗した開発は債務を支えることができない。また、失敗したのは不動産だけではない。このような失敗例は他にもあり、現在の数字に表れているような過剰債務につながっている。
こうした事態は深刻だが、差し迫った最悪の事態ととらえるのは間違いかもしれない。むしろ、債務の重荷とそれを支えるために経済資源を振り向ける必要性から、経済が他の有望な投資を追求する能力が制限されることが最悪の事態だ。
債務負担は相応に中国の経済成長のペースを減速させることになり、そう遠くない過去の急成長に比べれば確実に減速する。中国の人口動態はすぐには変化せず、また習近平国家主席はこれまで以上に経済に関する意思決定を一元化しているため、債務問題は悪化する一方となり、経済成長ペースに悪影響を及ぼすだろう。
(forbes.com 原文)