現在52歳のレオンが同社に投資を行ったのは2015年のことで、彼女はその当時、カンシノが中国では入手不可能だった小児用の髄膜炎菌髄膜炎ワクチンを開発していることに着目したという。レオンが籍を置く中国のベンチャーキャピタル「Qiming Venture Partners」は、シャオミや美団などのハイテクやヘルケア企業の出資元として知られている。Qimingの投資先の480社のうち34社が、2020年以降にIPOを実施したが、そのうち25社はヘルスケア分野の企業だった。
2020年に上海がロックダウンされた際も、Qimingの投資先企業のうちの数社は、オフィスでの業務を続けたという。家に戻れなくなった起業家の中には、シャワーの代わりにトイレで体を拭く習慣を身につけた者も居たと彼女は話す。
「スタートアップにとって重要なのは忍耐力だ」とレオンは言う。中国の起業家は、決してあきらめずに厳しいロックダウンに耐え抜いてきた。「だから私はいつも“中国の起業家を甘く見てはいけない、彼らは本当によく働くから”と話している」と彼女は述べている。
香港で育ったレオンは、コーネル大学で経営学の学士号を、スタンフォード大学のビジネススクールでMBAを取得した。その後、彼女は叔父の肝臓がんの闘病をきっかけに、ヘルスケア分野の投資に注力するようになった。
Qimingにおける彼女の注目すべき投資先の1社には、AI(人工知能)を用いて創薬を支援する米国のシュレーディンガー(Schrödinger)社が挙げられる。同社への出資は、最初は社内から反対する意見があがったが、彼女はそれを押し切って出資を行ったという。その結果、2020年にナスダックに上場したシュレーディンガーは、当初の予想を上回る2億2000万ドルを調達した。