今年のテーマは、「分断された世界における協力の姿」。スイス・ダボスで開かれる総会には130カ国から2700人以上の政府・国際機関の公人やビジネスリーダー、イノベーター、専門家が集結し、450以上のセッションを通じて世界が直面する喫緊の課題への取り組み状況を共有し、インパクトの加速に向けて協力を呼びかける。
「ダボス最新リポート」では、ダボス会議に参加した筆者が数回にわたって世界経済フォーラムのインパクト・イニシアチブ・リーダーを単独インタビュー。彼らとの対話を通じて、「分断された世界の今」と課題解決策を探る。
第1回となる今回は、世界経済フォーラムの取締役で「ニューエコノミー・アンド・ソサエティ・センター」所長のサーディア・ザヒディに、人的資本経営とリスキリングについて、世界の現状と、課題解決に向けた取り組みの進捗を聞いた。
サーディア・ザヒディ
──パンデミックによって、何百万人もの人々が仕事を辞める「大量退職時代」(Great Resignation)が到来しました。大量退職によって、企業と従業員の関係に変化はありますか。
この質問への答えは、世界のどこにいるかによって異なると思います。
多くの先進国では一般的に、経済がロックダウン下の状況から回復するにつれて、労働市場は非常に逼迫しています。世界のある地域ではご指摘の通り、労働者が燃え尽きたり、ここ数年の状況を経て時間の使い方を見直し、仕事の目的や意義がより重要になったりしたために、特定の分野で大きな退職者が出ています。一方、雇用主がパンデミックという衝撃にうまく対処することで、従業員による(仕事や企業に対する)再認識や再評価を得ているケースもあります。
しかし同時に、多くの新興国では失業率がパンデミック以前よりも高くなっていること、こうした市場の多くでは、人々は既存の仕事から離れるのではなく雇用機会を探しているというという現実も認識しなければなりません。私たちはこの現象を、グローバルの文脈の中でとらえる必要があるのです。