2022年11月初旬以来、オハイオ州では少なくとも82件の「はしか」の症例が記録されており、そのほとんどがワクチン未接種の子どもたちだ。82件という数字は一見すると目立たないが、オハイオ州、そして米国全体でははしかの患者数は0であるべきだ。
はしかは2000年に米国で撲滅されたと宣言された。これは小児予防接種の成功によるもので、通常、子どもは生後12カ月から15カ月の間にはしか、おたふくかぜ、風疹のワクチンを受け、その後4歳から6歳の間にもう一度ワクチンを受ける。
なぜ、はしかが再流行し、問題になっているのか。答えは簡単ではなく、保護者の間で反ワクチン感情が高まっている理由は多数あると思われる。ワクチンの使用、特に新型コロナウイルスの場合は、ワクチンの有効性と緊急性に関して、党派的なメッセージの対立があり、政治化された。このため、一部の保護者は、はしかに対するワクチンなど、他のワクチンが本当に自分の子どもに有用なのかどうか、疑問を持つようになったと思われる。また、ワクチンに関する誤った情報が多いため、学校への入学前に必要なはしかなどの小児ワクチンの接種を、親が気軽に小児科医院で受けられなくなったこともある。
例えば、ワクチン接種と自閉症発症の関連性を懸念する声が、ワクチン接種への参加を阻んでいる。このような反ワクチン論は、一部の保護者の間では根強いものがあるが、科学的根拠に基づく研究によれば、自閉症とワクチンとの関連は証明されていない。
ワクチンに関する懐疑論や冷笑論の高まりは深刻な問題であり科学者、医療従事者、公共政策の専門家が迅速に行動しなければ、今後も悪化していくだろう。米国におけるはしかに関しては、CDCのデータによると、2020年に報告された症例は13件だった。2021年は49件、2022年は合計118件が報告されている。また、はしかの症例が報告されているのはオハイオ州だけではない。ミネソタ州など他の州でも症例が出始めている。さらに、水疱瘡やポリオの例など、ワクチンで撲滅されたと思われていた病気も出始めている。
これは、さらに悪化し、醜くなる可能性のある大きな問題の始まりに過ぎない。はしかや水疱瘡の予防接種を受けさせない親が増えれば増えるほど、一般集団における集団免疫力が低下し、予防接種を受けていない子どもたちが致命的な感染症にかかる危険性が出てくるのだ。例えば、はしかは肺炎を引き起こし、最終的には死に至ることもある深刻な病気だ。オハイオ州の場合、32人の子どもがはしかのために入院しなければならなかった。これらの入院はすべて、ワクチン接種で防ぐことができた。
完全に予防可能な致命的な病気に対して、親たちが最終的に子どもたちにワクチンを接種するためには何が必要だろうか。最終的に子どもたちにワクチン接種を受けさせるまでに、どれだけの子どもの入院や死亡を許すつもりなのだろうか。最近のKaiser(カイザー)の調査では、71%の大人が学校での予防接種の必要性を支持していると報告されている。この数字は、わずか3年前には82%だった。子どもたちの健康は、政治的なイデオロギーや証明されていない根拠のない主張に還元されてはならない。私たち大人はいつになったら、健康であることが当然である子どもたちを支えるために行動を起こせるのか。
(forbes.com 原文)