海外

2023.01.16 08:00

元大手VC社員が「デジタルフォトフレーム」に商機を見出す理由

マイケル・セガール(左)とアビブ・ギルボア(右)(C)Skylight

マイケル・セガール(左)とアビブ・ギルボア(右)(C)Skylight

家族のためのデジタルフォトフレームの「Skylight」創業者のマイケル・セガール(Michael Segal)は、大手ベンチャーキャピタル(VC)のベッセマー・ベンチャーズに勤めながら、副業としてこの事業を立ち上げた。業務に携わっているのはわずか2人で、最小限の努力しかしていなかったにもかかわらず、売上は2018年に200万ドルに到達した。
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現在35歳のセガールは、迷いを振り切ってVC業界を去り、本格的に事業展開をすることにした。2021年にSkylightの売上高は7500万ドルに達した。同社は、創業以来外部の投資家から出資を受けていない。セガールは、コストを抑え、販売はオンラインのみにすることで、今後も外部から資金を調達しない方針だ。コンシューマ・ハードウェアのスタートアップの多くが、経営権を犠牲にして外部から資金を調達する中で、同社は稀な存在だと言える。

「私はVC業界の実情を見てきたが、彼らはハードウェアに関心がある振りをして、実際にはソフトウェアビジネスを狙っている」とセガールは話す。成長を維持するため、セガールはホームセキュリティ企業「Ring」の初期の社員で、アマゾンによる買収後に同社の成長の責任者を務めたアビブ・ギルボア(Aviv Gilboa)を社長に採用した。

現在、2人は新製品開発と新たな流通戦略を計画している。現在31歳のギルボアも大手VCのクライナー・パーキンスに努めた経験を持つ。

競争激化のデジタルフォトフレーム市場

デジタルフォトフレーム市場では競争が激化している。ツイッターの初期社員が設立した「オーラ(Aura)」は、11月に2600万ドルを調達した。また、「Nixplay」は昨年の売上が5800万ドルに達し、現在は株式投資型クラウドファンディングで1500万ドルを調達しようとしている。
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モスクワ生まれのセガールの両親は、彼が1歳の時にユダヤ人の大量出国の波に乗ってロシアを離れ、1989年にフィラデルフィアに移住した。高校で卒業生総代と学級委員長を務めたセガールは、ハーバード大学に進学し、卒業後はシリコンバレーに魅せられ、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズに入社した。徐々にビジネスについて学んでいった彼は、手作りグッズのマーケットプレイスを立ち上げるために退職したが、この事業は失敗に終わり、ハーバード・ビジネススクールに入学した。「私は、大切に育てられ、挫折を知らない子供だった。事業を失敗し、かなり落ち込んだ」とセガールは言う。

Skylightの構想は、ビジネススクールの授業の課題から生まれた。祖父母に喜ばれるものを考えていたセガールは、テクノロジーを使って写真を共有し、つながりを深めるというアイデアを思いついた。彼は、クラスメートのリカルド・アギーレと40個の試作品を作ってみたものの、ほとんど機能しなかったという。セガールは、MBAを取得後、ベッセマー・ベンチャーズに復職した。

2015年に、Skylightはキックスターターで約5万5000ドルを集め、製造業者に需要に見合った数のデジタルフレームを発注する資金を得た。売上高が数百万ドルに達したとき、本格的にビジネス化を考えたという。

セガールは、2018年にベッセマーを退職し、SkylightのCEOに就任した。彼は、高校時代の友人で、Scriptedでエンジニアリングディレクターを務めたジェイク・クリング(Jake Kring)をCTO(最高技術責任者)に迎えた。この年、同社は2つ目の製品として、家族が1台のデバイスでスケジュールや買い物リストなどを共有・管理できるスマートカレンダーをリリースした。
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編集=上田裕資

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