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2023.01.15 09:00

産業用大麻を食べた牛、乳に高濃度のTHC 独研究

Getty Images

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乳牛10頭に産業用大麻(ヘンプ)を与えたところ、行動に変化が生じ、消費者にとってリスクとなる水準の大麻成分「テトラヒドロカンナビノール(THC)」を含む牛乳を生産する可能性があることが分かったとする研究論文が最近、学術誌ネイチャー・フードに発表された。
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THC含有量が低い産業用大麻はマリフアナ(乾燥大麻)と異なり、欧米諸国で合法とされている。欧州連合(EU)では今年から、栽培を許可する産業用大麻のTHC含有率が0.3%に引き上げられた。米国は18年、産業用大麻の栽培を全国規模で合法化した。だが一部のEU諸国は、食品のTHC含有量に制限を設定。米国では、微量のTHCを含む食品の販売も連邦法で禁じられている。

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)などのチームが行った実験では、THCが少ない大麻品種「アイボリー」と、THCが比較的多い品種「フィノーラ」の2種類が使用された。どちらの品種も、THC含有量は0.2%未満だ。

飼料切り替えの最初の「適応」段階では、アイボリーの大麻草全体を使いTHC含有量を少なくした干し草を牛に与えた。次の「暴露」段階では、フィノーラの花と葉、種のみを使いTHC含有量を増やした牧草を与えた。牛は、暴露段階のTHC摂取量を低くしたグループと高くしたグループの二つに分けられた。
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牛から採取した牛乳と血漿(けっしょう)、排せつ物や、行動を分析した結果、THCが少ない牧草を食べていた適応段階では牛の健康への影響はみられなかった。一方、THCが多い牧草を与えられた暴露段階では、両グループで顕著な舌の動きや、あくび、唾液、鼻汁の増加、瞬膜腺の脱出や充血などが観察された。

中には、歩行が慎重かつ時に不安定となったり、普段より長く立ったり、異常な姿勢を取ったりする牛もいた。さらに暴露段階では、牛が食べる餌の量と生産する牛乳の量が減少。牛が摂取したTHCの量は、人間が向精神性作用を得るために必要な量の最大86倍だったとことから、こうした影響が出たとみられる。

異常行動は大麻草を与えられなくなってから数日後には止まったが、生産する乳からはTHCやカンナビジオール(CBD)などのカンナビノイド(大麻成分)が高濃度で検出され続けた。どのカンナビノイドが牛への影響を生んだかは特定されなかったが、THCが原因だったとみられる。

高濃度のTHCにさらされていた間、牛が出した乳には1キロ当たりTHCが316マイクログラム(1マイクログラム=0.001ミリグラム)、CBDが1174マイクログラム含まれていた。他のカンナビノイドの量は検出可能な水準に達していなかった。

EUは、食品1キロ当たりのTHC含有量の上限を、乾燥食品で3ミリグラム、大麻種子油では7.5ミリグラムに設定している。研究チームは、今回の実験で示唆されたこととして、牛乳や乳製品を通じたTHCの摂取により一部の消費者が「急性参照用量(ARfD)」(ある物質を24時間以内に経口摂取した場合に健康に悪影響を示さないと推定される量)を超過する可能性があると指摘している。

この研究結果を受け、規制当局は家畜の飼料としての大麻草使用を禁止するかもしれない。だがさらなる研究により安全性が証明された場合、大麻草は安価で成長も速いことから、副次的な飼料として活用されるだろう。

また今回の研究は、THCが牛乳を通じて人の口に入る可能性についての懸念を生むものだ。ただ、こうした牛乳を飲んだ人が陶酔状態になるかどうかは分かっていない。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

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