変化の渦中のヴィクトリアズ・シークレット、CEOが8カ月で退任へ

ヴィクトリアズ・シークレット(Getty Images)

米ランジェリーブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」は近年、苦境にあえいでいる。その理由としては、スーパーモデルを起用した広告や、「エンジェル」と呼ばれるモデルたちが登場する下着ショーといった、良くも悪くも有名なマーケティング戦略に既存顧客がそっぽを向き、より現代的でニッチな新興ランジェリーブランドに流れている状況がある。

こうした状況を打開すべく、ヴィクトリアズ・シークレットは広告・マーケティング戦略を刷新し、エンジェルによるショーの開催中止を発表すると共に、より幅広い層のモデルを採用している。

だがここに来て、同ブランドの最高経営責任者(CEO)を務めるエイミー・ハウク(Amy Hawk)の退任表明というニュースが飛び込んできた。これは明らかに想定外の事態だろう。

ヴィクトリアズ・シークレットのブランドCEOを務めるハウクは、2022年7月に同職に就任してからわずか8カ月で、この女性向け下着ブランドのトップの座を去ることになる。

同ブランドを運営するヴィクトリアズ・シークレット社(Victoria’s Secret & Co.:以下VSCO)が2023年1月3日付で米証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると、ヴィクトリアズ・シークレットとピンクの両ブランドでCEOの職にあるハウクは同社に対し、2022年12月27日に退任の決断を伝えたという。

ハウクは3月31日をもって退任する予定で、その後は、現在VSCOのCEOを務めているマーティン・ウォーターズがハウクCEOの職責を兼任すると、SECへの提出書類には書かれている。

VSCOは、事業のリポジショニングを行い、拡大路線へと舵を切ってきた。2022年11月には、同業のスタートアップ「アドア・ミー」も買収した。それからわずか2カ月で、ブランドCEOが退任を表明したことになる。

ハウクは2008年に、当時ヴィクトリアズ・シークレットの親会社だったLブランズに入社。2018年からはピンクCEOの職にあり、2022年7月にヴィクトリアズ・シークレットのブランドCEOに任命された。なお、VSCOは2021年にスピンオフの形でLブランズから独立し、株式を上場している。

VSCOはアドア・ミー買収の理由について、顧客のショッピング体験を向上し、デジタルプラットフォームの現代化を加速するためだと説明していた。

買収はまた、より広範な事業再構築の一環だった。VSCOのウォーターズCEOは、アドア・ミーを4億ドルで買収した一方で、業績不振だった251店舗を閉店した。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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