従来のハッキングと違い、このような攻撃はステルス性があり、事実上検知できない。一方で1つの暗号化システムを解読することは本質的にすべての暗号化システムを同時に解読することを意味する。
つまり、あらゆる秘密や機密データが細部に至るまで米国の最悪の敵にさらされる世界になってしまう。
こうしたシナリオを念頭に、米政府は2022年にすべての連邦機関に量子に対する安全性を確保するためのタイムラインを策定するよう働きかけた。一方、シンクタンクのハドソン研究所はQuantum Alliance Initiative(QAI)で調査会社オックスフォード・エコノミクスと提携し、このような攻撃が国の電力網、暗号資産(仮想通貨)市場にもたらす破滅的な損害に関する2つの計量経済学のレポート、そして米連邦準備に与える影響についての新たなレポートを発表した。
目下の疑問は量子コンピュータがこのような攻撃を行えるようになるのはいつなのか、専門用語でいうところの「暗号に関連する量子コンピュータ」が現実のものとなるのはいつなのかというものだ。十分「もつれる」ほどある大きなエンジニアリングの課題、すなわち量子ビットがかなりの素因数分解を行う同時作業があるため、懐疑論者は量子コンピュータでの暗号解読ができるようになるとしても、遠い未来の話だと言い張っている。
しかし今、中国の科学者たちはそうした未来への道を切り開いたと主張している。まあ、そんな感じといったところだ。
新しい論文の中で中国の科学者らは、372量子ビットの量子コンピュータを使って、非常に難しい暗号化の基盤、すなわち2048ビットのRSA(公開鍵暗号の1つ)を解読できるアルゴリズムを考案したと主張している。このアルゴリズムは、ドイツの数学者クラウス・ペーター・シュノアが考案した別のアルゴリズムを使うことで、1990年代にピーター・ショアが書いた量子コンピュータの解読能力の理論的基礎となっている研究を超えている。シュノアは2022年にショアのアルゴリズムよりもっと効率的に大きな規模で素因数分解できるアルゴリズムを発表した。「古典的」なコンピュータでもRSA暗号を解読することができるかもしれないとするものだった。
中国の科学者らは、もつれた10量子ビットしかない古典的なコンピュータを使って2048ビットのRSA暗号を解読することが可能であることを証明したと主張している。他の専門家が2048ビットのRSA暗号を解読するには2000万量子ビット以下では不可能だと言ってきたことを考えると、これは並々ならぬ偉業だ。