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健康

2023.01.14

障害者への「意識のバリア」をなくす NPO法人設立の道 #人工呼吸のセラピスト

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連載「人工呼吸のセラピスト」左からドキュメンタリー映画「風は生きよという」に出演した海老原宏美さん、宍戸大裕監督と、押富俊恵さん

両親の同時入院を乗り越えた後、人工呼吸のセラピスト押富俊恵さんは、電動車いすで外出する機会を増やす一方で、持病の肺炎や敗血症でしばしば緊急入院しながら、何とか在宅生活を続けていった。

その中で、障害者に対する「意識のバリア」を痛感し、だれもが暮らしやすい社会を目指すNPOの設立に動き出した。

前回:「両親の同時入院」という大事件 危機への対処法

介助者との意識のずれ

押富さんがよく使う講演ネタに、ショートステイ施設での「カレー事件」がある。

2013年6月に両親の同時入院を経験し、危機の備えとして相談支援専門員の河内屋保則さんの勧めで、障害者施設のショートステイをお試し利用したときの話だ。食堂で出されたランチに、押富さんはショックを受けた。出されたカレーが冷たく固まって、膜が張っていたのだ。

気持ち悪くて手を付けずにいたら、介助の職員に「カレー嫌いなの?」と聞かれ、理由を話したら、レンジで温め直してくれた。だが、他の障害者たちは、みんな当たり前のように食べていた。

「スタッフは何とも思わないのかな。感覚がマヒしているんだろうか」と悲しい気持ちになった。人工呼吸、在宅酸素の押富さんを受け入れるために職員研修会を開くなど、熱意のある施設だったが、それっきり利用することはなかった。

訪問看護の実習に来る看護学生とのやりとりでも、意識のずれを感じることがあった。車いすの押富さんがパジャマではなく普段着を着ていることに驚く学生が多かったのだ。

「学生たちは在宅療養の人に接するつもりで来ているけど、私にとっては療養ではなく生活。私たちの思いが本当に知られてないんだと思った」と押富さん。

特に、人工呼吸器を付けた車いすの障害者が地域で暮らす例はあまりにも少なくて、一般の人たちの目に触れにくい。

道の段差などの物理的なバリアも妨げになるが、意識のバリアをなくしていくことはさらに難しい、と押富さんは感じた。

NPO法人と福祉映画上映会のアイディア

どうすれば啓発できるか。河内屋さんと話し合う中で、出てきたアイデアがNPO法人の設立。そのプレイベントとしての福祉映画上映会だった。

「こんなのどうだろう」と河内屋さんがネットで見つけてきたのは2015年に制作されたドキュメンタリー映画「風は生きよという」(宍戸大裕監督)。各地で自主上映会が開かれていたが愛知県内では未開催だった。
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文=安藤明夫

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