(中略)こうしたなかでドラッカーは日本をどう位置づけているのだろうか。いま、日本は苦しい状況にあるといえる。ドラッカーは、日本の多国籍企業については悲観的だ。関連企業のグループからなる“系列”は、現代の経営の障害になる、とドラッカーは指摘する。ドラッカーは、日本をよく知っている。彼は、有名な日本の芸術品の収集家である。何十年にもわたり、日本を定期的に訪れている。また、日本人は彼を崇拝している。彼の自伝的エッセイのコレクションである『傍観者の時代』や、あまり知られていない著作ですら、日本では大変売れている。
「日本の経営トップは経営しない」
彼はそう指摘する。
「会長と社長は、政府と労働関係を担当す る。副社長が人事を行う。ラインに明確な 方向性は示されない」。この方向性の欠如は、 海外では通用しない。「日本企業は、世界中 でパートナー企業と協力する際に困難に直面 しています」と、ドラッカーは言うのだ。
日本企業のもうひとつの弱点としては、「彼 らは、4つか5つのエリート大学からしか採 用せず、第二次世界大戦後に創立された何 百ものほかの大学の学生を拒否しています。これは、大変な間違いです」。
一方で、ドラッカーは大きなビジネスチャンスが日本にあるとも考えている。 「まったく時代遅れの金融制度がやっと改革され、小口投資家に対する規制がなくなったとき、日本は、世界で最も成長する金融市場を持つことになります」
(以下略、)