2006年にムハマド・ユヌス博士がノーベル平和賞を受賞したことで一躍、世界中から注目を集めるようになった「マイクロファイナンス」。彼が創業したグラミン銀行は小口投資を通じて、多くの低所得者を貧困から救い出した。そんなユヌス博士に影響を受けた人のひとりに、ブルーオーチャード・ファイナンスのオマール・カンディール副会長がいる。彼にマイクロファイナンス投資の仕組みと投資哲学を訊いた。
―マイクロファイナンスの世界に入ったきっかけとは?
オマール・カンディール(以下、OQ):
私は決して裕福とはいえない環境で育ちました。母が兄を学校へ行かせたかったのに、銀行からお金を借りることができなかったほどです。だから、いつか世界中の貧しい人々の力になりたいと考えていました。
そんなとき、幸運にもムハマド・ユヌス博士と巡り会ったのです。(中略)
(中略)
―融資にはどのような基準が?
OQ:(中略)弊社ではさまざまな基準を設けています。たとえば、融資を希望する者の国ではマイクロファイナンスに適した法整備がなされているか? 利益率はどうか? 創業から3年以上経過しているか? 外部から監査を受けているか? 過去2年間で、主要な金融格付け機関あるいはマイクロファイナンス専門の格付け機関から肯定的な評価を受けているか? こうした基準をクリアしたMFIには、平均17カ月間融資します。(中略)
―融資が焦げ付く心配は?
OQ:すべてのローンにあるように、融資が焦げ付くこともあります。しかしながら、多くの人が驚くことに、ブルーオーチャードでは1%以下という極めて健全な状態であることが証明されています。
マイクロファイナンスの業界規模も20〜30%の割合で成長しています。「リスクが高そう」という一般的なイメージとは異なり、実際のマイクロファイナンス業界はとても堅実です。その「リスク」というのも、多くの場合、国の法システムや為替相場の変動によるもので、貧しい人が返済できないからではありません。彼らは返済する以外に融資を受ける手段がないので、懸命に働いて返します。
加えて、低所得者の多くは融資を受けて働けることに誇りを覚えています。かつて、私はエジプト人の女性客から手紙を受け取ったことがあります。それは「家族3代で物乞いをしていたが、融資のおかげでビジネスを始めることができた。いまでは従業員が8人もいる」というものでした。彼女に融資したのは200エジプトポンド(約3,000円)程度です。
興味深いのは、このシステムのもとでは女性のほうが男性よりも優れたパフォーマンスを見せている点です。事実、私たちの顧客の多くは女性です。
―それにはどういう理由があるとお考えですか。
OQ:家族と子供を養うために必死だからでしょう。(中略)
マイクロファイナンスはたんに地元の経済にとどまらず、教育、ひいては社会に大きな影響を与えるのです。貧困から解放された人々の視野が広がり、教育レベルも高まれば、国としてもより安定します。
(以下略、)