そこに書かれた言葉は簡潔で、ウイットにあふれ、本質をとらえており、投資のみならず、ビジネスや人生のヒントになる哲学が詰まっている。
投資家で大富豪となった人物はたくさんいても、「賢人」として世界中から尊敬を集める投資家で大富豪はバフェット以外にはいない―
他人が貪欲になっているときは恐る恐る、
周りが怖がっているときは貪欲に
1962 年、株式相場が急落したとき、バフェットはパートナーシップを1 社にまとめ、その潤沢な資金で割安株を買いまくり大きな実績を挙げた。そして、60 年代後半になって市場が回復し始め、69 年に市場が絶頂期を迎えると、「他人が貪欲になっている」として、バフェットはパートナーシップを解散し引退した。
しかし引退は短期間だった。70 年代に入り、株価が下落を始め、市場が弱気になってくると、バフェットはまた動き始めた。安い金利で資金を調達し、割安株に貪欲に投資を行い始めた。その中のひとつが、ワシントン・ポスト株だった。
バフェットが同社株を買った73 年、同社の株価は38ドルから16ドルに急落していた。ニクソン大統領を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」の報道を主導していた同紙に、政治的な圧力がかかり経営が脅かされ、リスクが高いと思われた同社株は売られていたからだった。だがバフェットは、同社には何のリスクもないと考えていたと語っている。
「当時、ワシントン・ポストの純資産は4 億ドルだったうえ、借入金もない。キャサリン・グラハムという正直で有能な経営陣もいた。なのに、時価総額は8,000万ドルでした。こんなに安全な投資先はあるでしょうか。全財産をつぎ込んでも、何ら心配することはなかったでしょう」
バフェットがこのとき投資した1,060 万ドルは、わずか10年あまりで1億4,000万ドルに達した。同様の投資を他の新聞社で行ったら、ダウ・ジョーンズで5,000万ドル、ニューヨーク・タイムズで6,000万ドルにしかならなかった。
他人と同じことをしていては勝てない。バフェットは常にウォール街とは逆のやり方をして勝ち進んできたのだ。