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GEICO社のワシントンにあるヘッドクォーター(@wikimedia)

バフェットは1970年から、バークシャー・ハサウェイの年次報告書の巻頭に「バフェットの手紙」を書き記し続けている。
そこに書かれた言葉は簡潔で、ウイットにあふれ、本質をとらえており、投資のみならず、ビジネスや人生のヒントになる哲学が詰まっている。
投資家で大富豪となった人物はたくさんいても、「賢人」として世界中から尊敬を集める投資家で大富豪はバフェット以外にはいない―




STOCKS BUFFETT CHOSE 02 
GEICO ガイコ

GEICO


場合によっては、注ぎ込む金額が少ないことが
かえって失敗になることがあります


バフェットが大学入学前に金物卸売企業マーシャル・ウェルズ株を父親と共同購入したのは、尊敬するベンジャミン・グレアムが同社株を買ったからだった。その初めての株主総会で出会ったルイス・グリーンはバフェットにこう聞いた。「なぜマーシャル・ウェルズ株を買ったんだい?」。「グレアムが買ったからだ」と答えたバフェットに、グリーンは「ワンストライク」と告げた。これは「空振りだ、坊や。自分の頭で考えるんだ」という意味だった。

この会話を機に、バフェットは自分で考えて投資先を見つけていくようになる。その考えのもと、21 歳のときに見つけたのが保険会社ガイコだった。

グレアムが会長を務めているという理由で、ガイコに興味を持ったバフェットは、ガイコを訪問して副社長と話す機会を得る。そのとき、ガイコが代理店を使わず、通信販売だけで自動車保険を他社より安く売るという、当時としては革命的なビジネスモデルを聞いて、成功を確信する。

だが、当時の市場の常識は、「たかだか通信販売」だった。大手保険会社が通販会社などに負けるわけがないと誰もが思った。「正気の沙汰じゃない」と批判する専門家もいた。それでもバフェットは、自分の手持ち資産の4 分の3を売り、ガイコ株を350 株購入したのである。極端な集中投資といってもいい。

同社会長であったグレアムでさえ、投資対象としては勧めなかった。ましてやグレアムの教えは分散投資である。それでもバフェットは自分を信じ、ガイコに資産の大部分を投入した。結果はバフェットの勝利だった。2 年後、同社株は倍になったのだ。

バフェットはいまでもグレアム理論の実践者だが、「そのまま」の実践者ではない。そのひとつの例となったのが、ガイコへの投資だった。バフェットは、上の言葉に続けてこう語っている。
「長い人生においては、時に信じられないような大チャンスが巡ってくるからです」

自分で考えぬいた結論を最も信用するのがバフェット流なのだ。

桑原晃弥=文 フィリップ・ペライク=イラスト 鈴木裕也=構成

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