ところが、家庭用の高級空調ファンやLED照明の売り上げが、新たな“金脈”になりつつある。
「はい、HVLSファン株式会社です」
「……おたくがあの『ビッグアスファンズ(クソでかい空調ファン)』をつくっている会社かい?」
こうした電話での受け答えが繰り返されたこともあって、1999年に創業したHLVSファンは、1年も経たないうちに、社名を「ビッグアスファン」に変えることにした。顧客にその名前がすっかり定着していたからだ。
事実、同社は本当に大きな換気扇を製造している。最も大きなもので直径24フィート(約7m30cm)もあり、航空宇宙機器開発企業のボーイングや飲料メーカーのコカコーラ、オンライン物流企業のアマゾンなどの工場で稼働している。
「皆さんがふだん触っているものは、我々が開発した空調ファンの下でつくられているか、箱詰めされているんですよ」と、同社の創業者兼CEOのケアリー・スミス(62)は話す。
米ケンタッキー州レキシントンに本社を置くビッグアスファン社は2014年、前年比35%増となる1億6,500万ドルもの収益を上げた。粗利益は、推定7,400万ドルに上る。もっとも、業界リーダーの数字としてはさして高くはない。
そこで、3年前からスミスは、成長性の高い新規分野を探し始めていた。まずはハイエンド向けの家庭用小型空調ファンを、次に長続きするLED照明をつくることを決断。
それに合わせて新たに「ビッグアスソリューション」という別会社を立ち上げ、店舗や学校向けに小型空調ファンを提供し始めた。
それまで、家庭用の空調ファンはどれも品質が低く、安かった。しかし、スミスは敢えて「高品質・高価格路線」に打って出た。すると、それまでの顧客層とは異なる、裕福な家庭が商品を購入するようになったのだ。
一方で、昨年に発売を始めたLED製品は同社にとっては大きな賭けだといえる。スミスは、法人の得意先に新製品を、そして、一般の消費者には車庫用の照明を売り込んでいる。しかし、50億ドル市場への挑戦は始まったばかりだ。
それでも、早くも同社の収益の17%を占めるまでになっている。社名を変えたのも早ければ、戦略の転換も早い―。ビッグアスファン社が照明業界をかき回す可能性は十分にある。