北米

2023.01.14 16:30

急落を続ける米国の平均寿命、原因はコロナだけではない

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米国における2022年の公衆衛生にまつわる最大の話題は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではない。RSウイルスでもインフルエンザでもないし、がんでも糖尿病でも心血管疾患でもない。これらの病気をすべて包括し、それ以上に重要なことだ。米国の平均寿命が低下を続けているのだ。

2021年の米国平均寿命は、26年ぶりの短さになった。その原因を新型コロナウイルス感染症だけに押しつけるのは間違っている。米国の平均寿命は、2020年に急落したのに続いて2021年も低下したが、それ以前の2012年~2019年にも、まったく伸びていなかった。さらにそれ以前について言えば、1990年頃からは、他の先進諸国と比べて、伸び率が鈍化していた。米国は平均寿命の大きな問題を抱えており、もっと真剣に取り組む必要があるのだ。

これは、医療費支出そのものに関する問題ではない。米国の「1人当たり医療費」は、他のどの裕福な大国よりも多いにもかかわらず、米国民はそれらの国と比較して、少なくとも平均4歳は若く命を落としている。そしてその差は、数十年にわたって拡大し続けている。この忌々しい統計値は、「国民や政策立案者には全く浸透していないようだ」。

公衆衛生の問題に関しては、システムが断片的であることに加え、政府の怠慢がある。たとえば、連邦政府の視野の狭さが、合理的なアプローチの邪魔をしている。

新型コロナウイルス感染症は、2022年も死因の第3位であり続けている。それにもかかわらず米国政府は、中国全土で大規模な感染の急増が進行しているなかで、新型コロナウイルス感染症への備えを大幅に縮小することを決定した。その影響は、国境を越えて広範囲におよぶ可能性がある。最近可決された米国議会のオムニバス法案には、新型コロナワクチン、検査、治療に対する新しい資金が盛り込まれていない。

米国の公衆衛生で軽視されている分野をまとめると、長いリストができあがる。以下は、米国の公衆衛生でうまくいっていない問題のほんの一部を列挙したものだ。

・肥満は、この国の公衆衛生上の危機であり、その程度は、他の国々では見られないひどさだ。肥満と多くの病気との相関関係はよく知られている。糖尿病、心血管疾患、脳卒中、高血圧、がんなどはその例だ。ウェゴビー(セマグルチド)などの新しい減量剤は役に立つだろう。しかし、どれも万能薬ではない。肥満予防はとても重要だ。肥満には遺伝的素因があるが、食事と運動でその傾向を打ち消すことができる。

・米国は、世界の先進国の中で唯一、妊産婦の死亡が増加している。そして高所得国の中で、米国の妊産婦死亡率は最も高い。にもかかわらず、理解しがたいことに、17の州がメディケイドで産後ケアをカバーすることを拒否している。

・銃乱射は、米国の公衆衛生上の問題だ。しかし、純粋に政治的な理由から、議会で正面から取り上げられることはない。銃による大量殺人は、2022年には660件以上発生しており、そのたびに「思いと祈り」が空しく響く。銃関連の死に対して議会の多くの人々がすることは、「思いと祈り」を捧げることくらいだ。

・米国では、「過少保険(Under Insurance)」が、公衆衛生上の問題になっている。加入している健康保険では十分な医療を受けられないという問題だ。

・違法で乱用されるフェンタニル(鎮痛剤として使われる強力な合成オピオイド)は現在、米国の公衆衛生上の最大の問題だ。しかし、連邦政府や州政府の対応は、ずっと不十分であり続けている。

平均寿命低下の流れを米国が食い止めようとするならば、公衆衛生に関わる問題の優先順位を変えなければならないだろう。現時点では、これは非現実的なことのように見える。

forbes.com 原文

翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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