再生可能エネルギーの木質バイオマス発電に新たな可能性

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先日、千葉県袖ケ浦バイオマス発電所の木質バイオ燃料が燃える火災事件が発生し、「バイオマス発電」という言葉がメディアからよく聞かれるようになりました。「バイオマス発電って大丈夫なの?」と心配する人や、いつの間にかあんな大規模なバイオマス発電所が稼働していたのかと驚いた人もいるでしょうが、ここでちょっとバイオマス発電について、おさらいをしておきましょう。

バイオマスとは、動植物から作られる資源のことです。石油や石炭も、もとは古代の生物が変化したものですが、バイオマスの概念にそれら化石燃料は含まれません。現在、日本で稼働している大規模なバイオマス発電所の多くは、間伐材などを細かく砕いたりペレット状にした木質バイオマス燃料を燃やす火力発電です。木を燃やすため、当然、CO2が出ますが、燃やして出る分と同じ量のCO2を森に生えていたときに吸収しているためプラスマイナスゼロになると見なされ、再生可能エネルギーのひとつに数えられています。

現在、日本には、木質バイオマス燃料を使用する火力発電所(石炭との混燃を含む)が大小合わせておよそ1000箇所あります。木質バイオマス燃料だけを使用する専燃発電所で7万5000キロワット以上の大規模発電所は、計画中のものも含めて20箇所以上あります。

バイオマス発電のメリットのひとつに「地産地消」があります。木材のほかにも、一般廃棄物、工業廃棄物、家畜の糞尿なども燃料に使えるため、循環型社会が実現できるという期待が寄せられているのです。

ただし、発電コスト(燃料代)が高いという課題もあります。そのため木質バイオマス燃料の多くを輸入に頼っているのが現状です。国産の材料で発電できるのがいちばんですが、効率よく燃える燃料を作るには木材を脱水しなければなりません。そのために石油や電力を大量に使ってしまっては本末転倒です。


そこで、岡山大学の大原利章助教らによる研究グループは、画期的な木質バイオマス燃料の製造技術を開発しました。木材を導管の方向に圧搾することで、ストローの中の水を絞り出すようにして水分を抜くという技術です。木材を圧搾するだけで、含水率を35パーセント以下にまで減らすことができるとのこと。これならコストをかけずに、よく燃える木質バイオマス燃料を効率的に製造が可能です。さらに、この方法は竹や草にも応用できるため、資源の幅が広がります。

しかも、その過程で木の中で作られる水溶性リグニンという物質も採取できるようになりました。水溶性リグニンは、抗ウイルス性があり、ナノ炭素といった新素材の原料となる可能性が期待されています。

文 = 金井哲夫

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