経済・社会

2023.01.11 10:00

世界経済を危機にさらすケビン・マッカーシー米下院議長の混乱

Getty Images


悲惨なコロナ対応とともに、2017〜2021年にわたるドナルド・トランプの大統領就任は、ドルに他の信頼性の問題を残した。1つは、習近平の経済以上に日本や韓国といった米国の同盟国を苦しめた中国との貿易戦争だ。トランプはFRBのジェローム・パウエル議長を攻撃し、利下げを引き出すために彼を解雇すると脅した。トランプ氏自身が米国債のデフォルトを誘惑したことは、アジアに痕跡を残した。
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2016年の選挙戦で、トランプはデフォルトを交渉戦術として使うことについて、声を大にしていた。そのときCNBCにトランプは以下のように語った。「私は、経済がクラッシュした場合も、取引をすることができるとわかっているので借りるだろう。そして経済が良かったら、それはそれで良かった。だから、結局負けることはない」。2020年4月、ワシントンポストは、トランプ当局が中国が保有する債務を懲罰的に取り消すことを検討していると報じた。

日本銀行、中国人民銀行そして台北、ムンバイ、香港、シンガポール、ソウル、その他の地域の関係者は、2023年に十分な心配をしているのだ。米国の景気後退懸念、欧州のエネルギー危機の深刻化、中国の「ゼロコロナ」ロックダウンからの混乱、日本円の乱高下、ロシアのウクライナ侵攻に対する不安など、政策立案者は多忙を極めている。

同時に、ワシントンからソウルまでの中央銀行が、過熱リスクを抑制するために借入コストを引き上げている。そして、パンデミック時代からの借り入れ余剰がある。
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アジアの中央銀行のバランスシートにある約3兆5000億ドル(約461兆円)の米国債が大きな数字だと思うなら、235兆ドル(約3京977兆円)を試してみて欲しい。それが、国際通貨基金(IMF)が推計する全世界の公的・民間債務の総額だ。これは、2021年に世界経済の回復にともない、およそ10%ポイントという大幅な減少を記録した後の数字だ。

負債総額は世界の国内総生産の247%に達しており、リーマンショック前の2007年にはGDPの約95%であったことと比較すると、その差は歴然としている。2023年に経済が赤字になるようなことがあれば、各国が財政的な余裕を失うことは明らかである。

また、共和党の下院議員たちがワシントンの格付けを人質に取ることになれば、世界はより危険にさらされることになる。たとえマッカーシーが下院議長の座についたとしても、アジアを犠牲にして政治的主張をするために米国の信用を落とすことをいとわないような議連を率いることになるだろう。もし、ワシントンのトップクラスの金融機関がそのローン支払いを要求したら、世界はどうなるのか。

forbes.com 原文

翻訳=上西 雄太

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