TikTokのユーザーは、お気に入りのクリエイターにバーチャルギフトを送るためにコインを購入し、クリエイターはそのアイテムをキャッシュに換えている。そのため、毎日膨大な額の資金がプラットフォーム上でやり取りされている。調査会社Sensor Towerによると、2022年に世界のユーザーがTikTokに費やした金額は、前年の20億ドルから34億ドルに増加し、米国だけでも前年比3倍以上の6億7000万ドル(約880億円)に達していた。
バイトダンスは、これらのトランザクションを統合的に管理するために、TikTokやその中国版のDouyin(抖音)を含む10以上のプロダクトのための口座を、JPモルガンと共同で設立した。同社はさらに、今後のフィンテック事業の拡大のために、自社のグローバル決済チームにJPモルガンの幹部らを迎え入れた。
両社とも、この提携や開始時期についてのコメントを控えている。しかし、JPモルガンのウェブサイトの資料によると、同社はバイトダンスのために「リアルタイム決済インフラ」を構築し、ユーザーが瞬時に銀行口座に支払いを受けられる体制を整えた。米国と欧州で始動したこのソリューションは現在、世界10億人のTikTokのアクティブユーザーの約5分の1をカバーしている。
この決済システムは、バイトダンスとJPモルガンの間でリアルタイムにデータを交換できるため、「バイトダンスは支払いを確認・監視できる」と資料には書かれている。両社とも、誰がその機密データにアクセスできるのか、どのような監視が行われているのかについては明言していない。
アメリカの大手銀行は長い間、中国企業と取引を行ってきた。しかし、TikTokと中国政府の関係や、同社による米国人のデータの取り扱いに対する懸念が広がる中で、バイトダンスのフィンテック分野での動きは、特に注目すべきものと言えそうだ。
元国家安全保障局のグレン・ガーステル(Glenn Gerstell)によると、JPモルガンがバイトダンスのフィンテック事業を担当することは、表面上は特に問題ではないという。しかし、彼は両社の提携には危険が潜んでいると語る。
グローバル決済に注力のTikTok
バイデン政権がTikTokの安全保障上の懸念への対処を模索し、超党派の議員がこのアプリの未成年者へ影響の調査を進める中で、バイトダンスとTikTokに対する監視の目は厳しさを増している。議員らは昨年、TikTokの禁止法案を議会に提出した。
しかし、そのような状況の中でも、TikTokの人気は衰えておらず、Sensor Towerによると、このアプリは昨年、米国で6000万回近くダウンロードされた。また、バイトダンスはTikTokの最も強力なライバルの1つであるメタが従業員を削減する中でも、米国で新たに数千人を雇用している。