自動運転車の現在(3)「貨物を運ぶロボット」

CES2022に出展されたAurora自動運転トラック(Getty Images)


何が課題なのか?


ここでは、この分野の動向に注目しておきたい人のために、重要な論点と疑問を紹介する。

ウォルマート、Loblawなど、繰り返し路上輸送を行う荷主が、世界で初めて自動トラック輸送のメリットを享受している。有望な業界であれば、複数の提供者が登場するのは当然だ。実際、エンドユーザーは常に競争によってより良い条件を得ようとしている。だから、今Gatikが独占しているスペースに、競合他社が参入してこないかどうかに注目している。

Gatikは、北米の有力荷主と深い顧客関係を築いており、先行者としての大きな優位性を持っている。これは、ビジネスモデルと技術の両方が厳密な検証プロセスを使ってうまく挑戦されなければ、起き得なかったことだろう。それでも「大きなパイ」には変わりがないので、他に誰が現れるのかを、ずっと見守って行きたい。ロボタクシーのプレイヤーは、確かに路上での運転のための強い能力を持っているが、そうした人を運ぶ運用は、地元の貨物輸送の仕様に適合させる必要がある。本連載の第1回では、アマゾンがまだ発表されていないパートナーとともに、地域貨物の自動的な運行を始めたいと考えていることを紹介した。そして、本連載の第2回では、WaymoとAuroraが自動車用の自動運転装置を開発しており、これを市街地での配送トラックの運行に適応させることができることを紹介した。間違いなく、これらの企業や類似の企業は、この潜在的に収益性の高いユースケースに入ることの是非を分析しているだろう。なにしろ各地では多くの輸送が行われているのだ。

オンロード輸送に特化したスタートアップのほとんどは、荷主や貨物輸送業者と戦略的なパートナーシップを結んでいる。Aurora、Gatik、Plus、Waymoは、主要なトラックOEMとも戦略的パートナーシップを結んでいる。トラックのOEMは、自動運転機能に関して複数の選択肢を顧客に提供するというスタンスを取るようになるのだろうか。現在はエンジンなどの主要部品でそうしたことが行われている。もし、OEMメーカーが自動運転をアラカルトで提供するのならば、OEMとスタートアップの提携がさらに進むきっかけとなるだろう。一方、同じ目的を達成するための手段として、買収が行われる可能性も常にある。

高速道路の分野では、高度自動運転(HAD)は提供する側の収益にどのような役割を果たすのだろうか。現在利用可能になっているHADは、完全なL4システムを採用するための足がかりとしての役割を果たすのだろうか。また、HADの普及が進んだとき、トラックOEMメーカーもHADの導入を加速させるのだろうか?

Tratonとその米国子会社Navistarは、TuSimpleとの技術提携を解消し、今後どのような展開を見せるのかが興味深い。彼らはただ手をこまねいているわけではなく、戦略上必要なこととして、AVトラック市場で確固たる地位を築こうとしているのは間違いない。
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翻訳=酒匂寛

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