自動運転車の現在(3)「貨物を運ぶロボット」

CES2022に出展されたAurora自動運転トラック(Getty Images)


新しい小売業者やトラック運送会社が公道でドライバーレス運転を始めるたびに、AVへの信頼性が増す。よって、ここで紹介したどのユースケースでも、進捗の主な指標として、私は顧客の取り込みに目を向けたい。ドライバーレスで走ることに加え、日々の物流業務にどの程度組み込まれているのだろうか。企業全体に適用されているのか、適用されていないとしたら何が問題なのか。展開パートナーシップが発表されたときには、自動運転システムの有効性と安全性、および現実世界の物流ニーズへの適合性を確保するための、顧客組織内の多くのハードルはすでに飛び越えられている。特に小売業にとっては、自社のロゴをつけた無人トラックが危険な運転をしたり、問題ののある運転で周囲のドライバーに迷惑をかけたりすれば、自社のブランドが危うくなる。だがそうしたデメリットもありながら、運用コストの削減による利益率の向上というメリットもある。

AuroraやKodiakの発表が計画通りに進めば、2024年には高速道路での商用ドライバーレス化が実現しそうだ。したがって、2023年には、多くのドライバーレス運転企業が、最終的なオンロードでの検証テストを実施することになるだろう。OEMは発売日を秘密にしたままだと思うが、それよりも早くなったらサプライズだ。Waymoは自分たちのペースで進んでいるが、もし私がどうしても賭けをしなければならないとすれば、彼らが2023年中にも先陣を切るということに賭けるだろう。

この連載が、この業界の非常に厳しい財務状況にあまり焦点を当てていないことにお気づきだろう。仕事仲間からは、スタートアップに関しては「キャッシュがすべてだ」といわれている。連載第2回では「乗客運搬型AVの実展開は、長期戦に耐えられる資金力の大きなプレイヤーによって行われると確信している」と断言した。「現金と確かな技術、そして我慢強さを持つ企業が、ゲームに参加し続けることができる。このうち1つでも欠けていると、今日の経済情勢では企業の将来は不確かなものになる」のだ。この言明は、トラックのドライバーレス運転にも同じように当てはまる。

これまでトラック輸送において、潤沢な資金をもつ長期戦型プレイヤーの典型は、自動車メーカー、大手トラック運送会社、そして荷主だった。ここでご紹介した情報から、それぞれのタイプの企業が、それぞれのビジネス上の理由でゲームに参加していることがおわかりいただけただろう。彼らは、かっこいいロボットに目を輝かせてはいない。目の前に動かすべき荷物があり、それを今よりも効率的に、より早く、より少ないコストで移動させなければならないのだ。
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翻訳=酒匂寛

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