OLD SALESからNEW SALESへ
顧客の創出からアポイント、商談、契約にサポートなど仕事は多岐にわたる営業職。やりがいがある一方、肉体的にも精神的にもハードな面が多く離職者が多いのも現実だ。「勘・経験・根性」の3Kともいわれる時代錯誤なスタイルを脱するには何をすべきなのか。
2022年11月、沖縄にある「琉球ホテル&リゾート 名城ビーチ」にて、国内リーディングカンパニーの営業企画責任者および、営業に係る有識者たちが一堂に会する招待制のカンファレンスが開かれた。テーマは「NEW SALES」。旧来の営業を脱し、これからの新しい営業について考える1泊2日の会議となる。
「NEW SALESの時代」と題したオープニングメッセージを背景に、主催者であるナレッジワークCEOの麻野耕司(以下、麻野)が登壇。日本における営業職は課題の多い職業であり、生産性はほぼ全業種でグローバル水準を下回っていること、そして「労働は苦役なり」という考え方を改めていくためには新たなるチャレンジが求められていると述べ、参加者へカンファレンスを実施した背景を説明した。旧態依然のスタイルであるOLD SALESから「NEW SALES」へと生まれ変わる必要性、日本の営業職を根本から変えていきたいと訴えた。
顧客と未来を語る存在であれ
「Change of Sales −環境変化に営業組織はいかに対応するべきか−」というテーマでは、サイバーエージェント執行役員の石井洋之(以下、石井)、NTTコミュニケーションズSenior Catalystの徳田泰幸、パナソニック コネクト執行役員・常務の山中雅恵が登壇。各業界のリーディングカンパニーの営業担当者が、それぞれの会社での取り組みなどを紹介した。
市場ニーズに合わせ、営業機能や体制を柔軟に変更してきたサイバーエージェント、セールスDXの成長階層というかたちでわかりやすく説明したNTTコミュニケーションズ、そしてハードウェアとソフトウェアの各事業観点から、顧客別戦略の明確化やマネジメントプロセスなどの改革を説明したパナソニック コネクト。三社三様の取り組みのなかには画期的な組織体制を構築しているものも多く、メモを取る参加者の姿が見られた。
セッションのなかで石井は「お客さまと未来を語る」ことを提案。また「営業担当者は一緒に顧客の目標を達成するパートナーであれ」と、取引先のキーマンの悩みにジャストミートで答えられる存在であることの重要性について熱く語った。
クローズドだからこそ聞ける質疑応答
初日最後のセッションは「キーエンスの営業大解剖」と題し、キーエンスマネージャーの柘植朋紘が登壇。一日のスケジュール例、時間の使い方などから、同社の営業の強さを支える考え方や取り組み、1人あたりが生み出す営業利益が伸び続ける理由などについて語った。
また、キーエンス関係者がカンファレンスなどに登場する機会はほとんどなく、参加者の期待も高まっていたことを受け、あえて質疑応答に時間を割くといった配慮も見られた。謎多きキーエンスの営業のスタイル、考え方について窺い知ることができたのは、クローズドな空間ならではの醍醐味だろう。
誰もがビジネスを楽しめる世界に向けた新しい営業組織への提案
2日目を迎えた最初のセッションは、Xactly代表取締役社長の福眞総一郎、ZVC JAPAN(Zoom)社長の佐賀文宣(以下、佐賀)、ユーザベース代表取締役 Co-CEOの佐久間衡、モデレーターとしてDNX Venturesマネージングパートナーの倉林陽の計4人が登壇。「デジタルセールス−データとテクノロジーが生み出す新しい営業−」をテーマに、アメリカにおけるセールステックの最新トレンドや自社製品の解説、パーパスや今後の展開などを説明した。それぞれの立場から営業DX、ITを活用した営業活動の生産性や効率性を高める手法や導入事例なども紹介され、誰もがビジネスを楽しめる世界になるよう、そして同カンファレンスのテーマである新しい営業組織におけるスキームの提案などが行われた。
佐賀はZoomの開発者であり同社の創業者兼最高経営責任者であるエリック・ユアンのエピソードに加え、2035年にはZoomが画面越しの相手が飲んでいるコーヒーの香りを感じ取れるだけでなく、ハグもできるようなコミュニケーションツールになるという目標を紹介。未来の営業スタイルだけでなく、人々の生活がさらに進化することを期待できるセッションとなった。
カンファレンスの継続的な開催に期待
最後にクロージングメッセージを伝えるべく、再び麻野が登壇。セールスイネーブルメント(Sales Enablement)に必要な要素として、「やるべきことの明確化とできることの最大化」が必要であることや、対象領域として「ナレッジ」「ラーニング」「ワーク」「ピープル」という4つを掲げ、それぞれがもたらす相互関係が重要であることなどを説明した。最後に麻野は「私はいまの営業のスタイルを本当に変えていきたいと思っている。それを変革していくのは、一つひとつの企業で営業の変革に取り組まれる、ここにいる皆さまだと思っています。そして私は、変革に挑戦するイノベーターの支援を、自分自身の人生をかけてやっていきたい。これからの営業という組織や体制を変えていくチャレンジを、今日を皮切りに一緒にやっていければと思っております」と、会場で耳を傾ける参加者に熱い思いを述べた。
10年後には、営業の生産性や満足度がそんなに低かったのかと笑って話せる未来が来ることを願い、そしてNEW SALESを目指すカンファレンスを今後も定期的に開催していくと宣言し、1泊2日の会議は大団円を迎えた。
今回のカンファレンスでは、それぞれのセッションの最後に登壇者たちの「あなたにとってのNEW SALESとは?」という質問に対する一言コメントが紹介された。「データで全員の顧客理解を上げる」「チームプレイ」というものから「パッと心までつなげること」「サプライズ」といった感性に訴えるものまでさまざまな一言が掲げられた。参加者たちにとっての「NEW SALES」とは。それぞれに目指す新しい営業のかたちを模索する参加者たちの今後の活動に期待したい。
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