ビジネス

2023.01.30 09:00

数字を売りにしない。「いい会社」に投資する鎌倉投信の原点

鎌田:今の時代は、特にあるように感じますね。金融商品はパフォーマンスの数字が重要視されますが、実は数字を売りにすべきではありません。なぜなら数字を売りにした時点で、パフォーマンスが悪くなるとお客様は離れてしまうからです。反対にパフォーマンスが良い時期でも、今が売り時だと思われることもあります。

一方、数字ではなく、考え方や哲学に賛同してもらえれば、商品そのものやブランドの価値も上がっていくものです。アパレルブランドも同様かと思いますが、ブランドとは会社が単独で創るものではなく、お客様と一緒に価値を高めていくもの。そのためには世界観や哲学、会社の理念といった根本の部分が豊かでなければいけないと痛感しています。


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中道:非常に賛同します。僕はブランドビジネスに長らく関わってきましたが、ファイナンス分野で、そのように話される方は初めてです。鎌田さんはファイナンス視点の話をされていると思いますが、僕もブランドについて全く同じ観点で考えています。

鎌田:やはり金融でもアパレルでも、商品の裏にある世界観が求められなければ、一時的な消費で終わってしまうのではないでしょうか。現代のように、一通りのサービスが行き渡っている状態において、消費者が選択するポイントには、商品の購入によって心のあり方や生活がいかに変化するかという点があると思います。

利便性やコストだけを求めていては新しいものは生まれませんが、商品の世界観によって新しい価値提供は可能となるはず。そのため、今は金融業界を含め、様々な産業で提供価値の再定義がされている時代といえると思います。

中道:価値の再定義は世界的な潮流で、日本も気づき始めた段階と言えますね。鎌倉投信を立ち上げたきっかけも、金融業界での価値の再定義をしなければいけないという考えからでしたか。

鎌田:かつての同僚と本当に世の中に必要とされる資産運用会社や投資のかたちを作りたいという考えがベースとしてありました。

そこから生まれたのが、少額から誰でも参加できる投資信託を通じて今後の日本をよくしていくいい会社に厳選投資をする、売却を前提としない企業応援ファンド。それが「結い2101」です。

実績も知名度もない中、2010年3月に267人のお客様から3億円をお預かりして、ファンドがスタートしました。

今では約2万人から500億円ほどお預かりしていますが、全く投資に関心がなかった方たちにもお客様になっていただいています。世の中をよくしたり、社会的な取り組みに関する運用や投資を実際に知ったりすることで金融との距離が一気に縮まるんだろうと思います。

中道:新しい形の投信といえるのではないでしょうか。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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