ビジネス

2023.01.30

数字を売りにしない。「いい会社」に投資する鎌倉投信の原点

中道:働き始めて、すぐに馴染めましたか。

鎌田:最初はジレンマがありました。当時の金融業界はちょうどバブル絶頂期です。その後にバブル崩壊を経験するわけですが、その頃の業界は自分たちの金儲けに一生懸命で、世の中のためにという雰囲気はありませんでした。同業を出し抜いていかに上に行くか、あるいはメガバンクや都市銀行にどう対峙していくかといった意識が強かったですね。

簡単にいえば、業界の中での競争が激しく、「我々の会社は何のために存在するか」「世のため、人のために何をするか」といった志や理念はあまり語られない風潮でした。

私はその後、外資系に転職するのですが、運用会社としての哲学が非常に明確で、非常に働きやすくなりました。プロ意識も高い環境だったので、働き方も磨かれました。

その運用会社を、リーマンショック直前の2008年1月に退職したわけですが、その頃には世界的に金融業界の歪さが露呈され始めていました。本来、金融は社会経済を豊かにするためのものにも拘らず、表舞台で威張って暴れ回っているイメージが定着してしまっていました。

そして、結果的にリーマンショックをはじめ、社会を混乱させて迷惑をかけた事例も少なくありません。

金融業界でのジレンマと外資系での経験、そしてリーマンショック時の混乱を再び起こしてはいけないという気持ちが、鎌倉投信の原点に繋がっています。


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中道:僕はロンドンでビジネススクールに通っていましたが、卒業生の9割は金融業界に進んでいました。僕はマーケティングやクリエイティブをビジネスにいかに活かせるかという思いで通っていたことに加え、当時は金融を“悪”だとすら考えていました。

おカネは大事であるものの、金融業界にはキレイなおカネが流れていないような気がしていました。

鎌田:ものすごくわかります。

中道:起業前はリーバイスでマーケティング責任者を担っていた時期もあるのですが、マーケティングの基本はおカネを使いつつ、いかに価値を生み出すことができるかというもの。一方、ファイナンス部門は反対の立場で、よく僕が足を引っ張っているという見方をされたものです。

互いに足を引っ張り合うのではなく、目線を合わせて前向きな話をしようとしたものの、なかなか上手くいきませんでした。もしかしたら人によるかも知れませんが、当時はマーケティングとファイナンスは水と油のような関係だと感じていましたね。

バークレイズ時代は会社としての哲学が明確だったとのことですが、やはり哲学があるかないかの差は大きいのでしょうか。
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文=小谷紘友 編集=鈴木奈央

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