EUの制裁金550億円で終わらないメタの「追跡型広告」の問題

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アイルランドのデータ保護委員会(DPC)は先日、メタが個人データを不正に利用していたとして、制裁金を科すと発表したが、この件は、これで終わりという訳ではない。

DPCは1月4日、メタがEUの一般データ保護規則(GDPR)に違反したとして、同社に3億9000万ユーロ(約550億円)の制裁金を科すと発表し、3カ月以内に是正策を講じるよう求めた。

問題となっているのは、メタがフェイスブックとインスタグラムの個人データを利用する上での正当性だ。GDPRにおいては、企業がユーザーの個人データの利用を正当化するための6つの条件が定められ、そこにはユーザーの同意を得ることが含まれている。

2018年5月のGDPRの施行前に、メタはフェイスブックとインスタグラムの利用規約を変更した。それ以前は、同社はターゲティング広告のためのデータ収集を正当化する上でユーザーの事前の同意に頼っていたが、新たな規約では、「同意する」ボタンをクリックするようユーザーに求めるようになった。

メタは、ユーザーがボタンを押すことで広告の表示に同意していると主張した。しかし、DPCは、ユーザーはこの件について何の選択権も与えられていない点が問題だと主張していた。

DPCは当初、メタの主張が合理的だと解釈したが、その後、メタがユーザーへの十分な説明を怠ったとして、罰金を科す決定を下した。しかし、DPCと他の欧州の規制当局との間で意見が対立した結果、この問題は欧州データ保護委員会(EDPB)に付託され、この決定は覆された。

EDPBは、メタが利用規約を持ち出してパーソナライズ広告を正当化することを、EUの個人情報保護法は認めていないと判断し、DPCはこれに従った。しかし、これで問題が終わったわけでは決してない。まず、当然のことながら、メタは判決の内容と罰金の両方に対して上訴する意向だ。

「フェイスブックとインスタグラムは本質的にパーソナライズされており、各ユーザーに独自の体験を提供することが、彼らが見る広告を含め、そのサービスに必要かつ不可欠な部分であると信じている」と同社は声明で述べた。

メタは、広告の表示を継続できるよう、さまざまな選択肢を検討しているとし、次のように付け加えている。「各ユーザーの同意を最初に求めない限り、パーソナライズされた広告を欧州のメタが提供できなくなるという指摘は間違っている」
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編集=上田裕資

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