新年に見直したい新型コロナ感染を巡る米国の「7つの現実」

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新型コロナウイルスのパンデミックに対する備えを強化しなければ、米国は「近代史上、最悪の暗黒の冬に直面することになる」──米生物医学先端研究開発局(BARDA)の局長だったリック・ブライト博士は2020年5月、連邦議会でそう警告した。

そして実際に米国は、3度目の“暗黒の冬”に見舞われている。以下、次の冬以降に同じ状況に陥ることを回避するため、対応すべき7つの事柄を紹介する。

1. “最悪”の状況は過ぎても続くパンデミック


広く注目を集めた「新型コロナウイルス感染症(Covid-19)と季節性インフルエンザ、RSウイルスの同時流行」は、間もなくヘッドラインから消えることになるだろう。Covid-19以外の流行が、すでにピークに達したとみられるためだ。

ただ、Covid-19のパンデミックは収まる気配を見せていない。新たに出現したオミクロン株の亜系統、「XBB.1.5」は急速に感染者を増やしている。米疾病対策センター(CDC)によると、オミクロン株の異なる系統の組換え体であるXBB.1.5の感染者の割合は、昨年末には新たに確認される感染者のおよそ41%となり、1週間のうちに倍増していた。

また、XBB.1.5はこれまでに出現した変異株のなかで最も、免疫を逃れる力が強いとみられており、現時点では中和抗体がない。

2. 敗血症による死者の増加


オックスフォード大学出版局のオンライン・ジャーナル「オープン・フォーラム・インフェクシャス・ディジージズ」に昨年末に発表された論文は、同時にかかる可能性がある複数の感染症について、より迅速に感染源を特定できる新たな診断法が必要だと指摘している。

正確な診断が遅れれば、適切な治療を行うことができず、予後が悪くなる危険性もある。

3. 対応力不足の医療インフラ


米国の医療体制は、RSウイルス感染症の患者への対応ですでにひっ迫している。多くの地域では昨年末の時点で、病床利用率が80%を超えていた。RSウイルスの流行が収まり始めても、Covid-19の患者が増加すれば、医療体制が直面する状況は変わらないだろう。

例えば病床利用率が85%のボストンのある病院では、患者が廊下に置かれたストレッチャーで8時間待たされるケースも報告されている。

4. 混乱が続くサプライチェーン


サプライチェーンの混乱により、神経刺激薬の「アデロール(アンフェタミン)」や抗生物質の「アモキシシリン」など、一部の医薬品の品薄状態が続いている。米食品医薬品局(FDA)が現在不足しているものとしてリストアップしている医薬品・医療機器は、約125種類にのぼっている。

こうした混乱は医薬品の値上げにつながっており、医療保険に加入していない人や、自己負担分が多い加入者たちの負担を増大させている。
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編集=木内涼子

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