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2023.01.05

外国企業が撤退したロシアで国内テック企業が台頭も西側依存のつけは大きく

Getty Images


うまくやっている企業もある。

ロシアのハイテク企業は数年前にクラウドサービス市場に進出した。Yandexが市場をリードしている。同じくロシア企業のCROC Incorporated(CROC インコーポレーティッド)もそうだ。欧州企業はロシアでクラウドサービスを提供することを禁じられている。

制裁は2020年初めのロックダウンとほぼ同じように、ロシアのクラウド市場を助けてきた。ロシアを拠点とする企業が現地のクラウドサービスを独占する可能性もあるが、ロシアが簡単にアクセスできない技術のため、多くの失敗があるだろう。

一方、Wildberriesは2022年の総売上高をほぼ倍に増やすつもりだ。「Wildberriesは今年、売上高を1兆5000億ルーブル(約2兆8000円)にする計画だ」とインタファクス通信は同社のCFO、ウラジミール・バーキンの言葉を報じている。もしWildberriesがAliExpressの事業を買収すれば、月間アクティブユーザー数3500万人を獲得することになり、2021年のAliExpressと並ぶ。2022年が終わり、その数はさらに増えるかもしれない。AliExpressはeコマースのトップ10に入る企業だ。インドのFlipkart(フリップカート)、中国のJD.Com(JDドットコム)、Wayfair(ウェイフェア)を上回っている。

2022年12月にタカ派のオンラインメディア「European Interest」は、欧州連合の第9次制裁にバカルチュクおよび/またはWildberriesが含まれるか疑問を呈した。制裁対象者の全リストは2022年12月16日に発表された。しかし、多くのVTB関連子会社が制裁を受けたにもかかわらず、Wildberriesとそのオーナーはリストに含まれていなかった。

ウクライナでの戦争で2022年に1000社を超える企業がロシアから撤退した。ロシアがその半分すら国内企業に置き換えることはあり得ない。中国は存在感を高めるだろうが、ここでは慎重になっている。12月初め、中国はロシアの防衛関連企業へのマイクロチップの販売を一部禁止すると発表した。これは象徴的なものになりそうで、完全に禁止するのは難しいだろう。いずれにせよ、ロシアはこの点で囲い込まれている。近代経済から切り離され、ソ連崩壊後に自力で発展することもなく、技術面で西側に依存していることに今ようやく気づいている。

多少の依存は構わない。しかし、依存しすぎるのはよくない。ロシア人は欧州のエネルギー危機をからかうかもしれない。エネルギー危機の理由の大部分は気候変動に対する欧州独自の取り組みと、ロシア産の石油・ガス輸入の制限(全面的な販売禁止ではない)だ。確かに、欧州はロシアの燃料を手に入れるのが難しい状況だ。しかしそれと同様に、ロシアは何年も前に自国でハイテク経済を構築すべきだったのにそうしなかった。自国のハイテク・エコシステムをわざわざ構築する代わりに外交官がよくいうように「西側パートナー」に依存することを選び、ハイテク経済で遅れをとっている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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