ビジネス

2023.01.08

「2023年の景気後退」に向き合い始めた世界 マーケティング成功の鍵は

160カ国から7万人以上が参加したウェブサミット


コツコツ信頼を積み上げていくマーケティングへ


筆者は今回、マーケティングのセッションを中心に聴講した。顧客や見込み顧客と直接繋がっている状態をいかにして構築するかという切り口のセッションがいくつかあった。コンテンツマーケティングでいう「オーディエンスビルディング」である。インフルエンサーも大企業も、顧客と誠実に向き合い、関係を構築していくことが大切だと訴えた。

メールは安定して情報を届けられるし、スマホアプリはコンテンツを見てもらえる可能性が高い。顧客や見込み顧客と関係を構築し、コントロール可能なチャネルを通して直接つながることで、景気後退局面でもダメージを最小限にとどめられるというわけだ。

もう一つ、企業(やブランド、以下同)がコミュニティーを構築し、運営することの重要性についても言及があった。いまやコミュニティーの有無が「差別化要因」となっており、リセッションの時代にも経営の安定をもたらす。

人は、企業を信頼した後に、「つながりたい」と考える。能動的に個人情報を差し出し、オーディエンスとなる。この流れを生むためには、企業が信頼を得ることが不可欠だ。同様に、コミュニティーを構築するためには、信頼を築き、それを維持することが大前提となる。

オーディエンスビルディング、そしてコミュニティービルディング(およびマネジメント)。それぞれアプローチは異なるが、消費者が能動的に企業とつながるというプロセスは共通している。「信頼」はいまも昔もマーケティング成功へのカギなのだ。日本でも、飲食店にしてもハイブランドにしても、オーディエンスビルディングもしくはコミュニティービルディングができているところは、いかなる状況であっても客を集めることに成功している。

テクノロジーによって顧客体験を向上させることはできるが、信頼に直結することはない。マーケティングに魔法の杖は存在しないのである。いつの時代もそうだが、リセッションが近いときこそ特に、コツコツと信頼を積み上げていくことが求められる。刈り取り型のマーケティングから、地道に信頼を積み上げていくマーケティングへ。いまマーケティングの転換期に差しかかっているのだと、カンファレンスに参加して強く感じた。

ウェブサミット
ウェブサミットのチケットは早々に売り切れた。人で埋まるメインステージの座席。会場外には参加者の長い列ができていた

文・写真=田中森士

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