マスマーケティングに舵を切っている企業は、早急にマーケティングを見直す必要があるだろう。筆者がカンファレンスに参加して感じたこと、考えたことを共有したい。
160カ国から過去最多となる7万1033人が参加
「世界のテック業界を再定義する」と銘打たれたカンファレンスには今年、160カ国から過去最多となる7万1033人が参加。全体の42%にあたる3万人以上が女性参加者だった。ウェブサミットは、「スタートアップ、企業、投資家が集まる場として最も高く評価されているイベントの一つ」と評される。投資業界からの注目度も高く、VC、エンジェル投資家、大手ファンドら1081人の投資家も参加した。
登壇者の数と顔ぶれも豪華だ。世界的なリーダーや起業家、経営者など1050人が登壇。メインステージでは言語哲学者のノーム・チョムスキー氏がオンライン登壇、また別のセッションではウクライナのゼレンスキー大統領夫人、オレナ・ゼレンスカ氏が登壇しプレゼンした。
ウェブサミットで登壇したウクライナのゼレンスキー大統領夫人、オレナ・ゼレンスカ氏。セキュリティー上の理由から、登壇することは事前に告知されなかった
「2023年のリセッション」前提で進む議論
同じテクノロジーとスタートアップのカンファレンスに、パリの「ビバテック」がある。筆者は昨年6月、現地参加した。当時もロシアのウクライナ侵攻やインフレ、サプライチェーンの混乱といった事象があり、ビジネスは厳しい環境にあった。それでも、楽観的というか、前向きな議論が多かったのが印象に残っている。皆で協力してなんとかしようという雰囲気にあふれていた。
一方、今回のウェブサミットでは、どこかどんよりとした雰囲気が感じられた。テクノロジーやスタートアップ、投資、気候変動、マーケティングなど、セッションのテーマは多岐にわたる。
しかし、プログラムには「リセッション(景気後退)」の文字が目立ち、聴講中も頻繁に耳にする。「外部環境」の変化である。多くのセッションで「2023年のリセッション」前提で議論が進んでいく。日本とは温度差がある。VCもスタートアップも、「冬の時代」に備えている印象だ。
景気後退局面はもうすぐそこに迫っており、それに備えなければ、という議論が目立った。わずか5カ月でこれほど変わるものかと驚いた。同じく両方のカンファレンスに参加した韓国のジャーナリストの友人も、「6月と比べてシリアスな雰囲気だ。景気後退局面は、もう近いね」と冷静に分析していた。