ミツバチ、鳥らの受粉媒介不足で農作物収穫量低下、毎年42万人死亡

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コーヒーやココアといった代表的な商品作物は、その繁栄と繁殖を動物による受粉に大きく依存している。動物の受粉はそれ自体で、世界の農産業に2240億〜5770億ドル(約29〜75兆円)相当の経済的利益をもたらしている。農薬や化学肥料の過剰使用、光害、人為的な気候変動のために「昆虫の黙示録(大量死滅)」を目にし始めていると警告する科学者もいる。

研究者たちはアジア、アフリカ、南米、欧州などさまざまな大陸の農場から得たデータと証拠を用いて、モデルの枠組みを利用した研究を行った。研究チームは受粉が不十分なために作物の損失がどの程度発生するかに注目した。次に、農業経済モデルを用いて、受粉の低下が死亡率や食の脆弱性に及ぼす影響、特にホンジュラス、ネパール、ナイジェリアの開発途上の3カ国における経済的損失を推定した。

失われた食糧生産または経済的損失は低所得国で最も高いが、非感染性疾患に最も苦しんでいるのは中所得国と富裕国だった。中所得国に属する中国、インド、インドネシア、ロシアは公衆衛生上の問題で最も大きな負担を抱えている。一方、低所得国は農業総価値の10〜30%を失い甚大な損失を被った。

「研究結果は、不十分な受粉がすでに世界的に大きな超過死亡を引き起こし、生産地では経済価値の損失をもたらしていることを示唆している。さらに、受粉で生産される食品の供給が減少すると、国内外で価格が上昇し、食品が容易に入手しにくくなることから、食生活や健康状態における不平等が拡大する可能性があることも示唆している」と研究者は結論づけた。

「世界的な受粉媒介者の不足が健康におよぼす影響に関する我々の推定は、保守的なものである可能性が高いことは注目に値する。今日の受粉媒介不足による健康への影響の推定値は、他の主要な世界的リスク要因、すなわち物質使用障害、対人暴力、前立腺がんに起因するものと同程度だろう」と研究者たちは付け加えている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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