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2023.01.04

「全自動ネコ用トイレ」でペット業界に革命起こす米国人起業家

Whisker


さらに、赤字の大きな原因の1つは、プラスチックの製造工程にあったが、金型を作り直すにはコストがかかる。「どの銀行もお金を貸してくれなかった。私の会社には担保がなく、5万ドルものコストがかかる金型は、銀行にとって何の価値もなかった」

しかし、そんな彼を救ったのは、自動車メーカー時代に築いたプラスチック業者との関係だった。彼は、その業者から12%の金利で2年間の融資を受けることに成功した。そして、2005年に製造工程を刷新すると、収益が伸び始めた。


ウィスカーはウィスコンシン州ジュノーで、すべてのロボット型ごみ箱と自動給餌器を製造している(Whisker)

バクスターと彼のチームはその後、技術的な改良を加えた新たなバージョンの製品を発売した。2015年には現CEOのザプキがコンサルタントとして加わり、デジタルマーケティングを強化して、公式サイトのトラフィックを10倍に伸ばした。さらに、ネコ関連のインフルエンサーを起用して、インスタグラムのフォロワー数を14万人に増加させた。

目指すはペット業界のルンバ


そして、年間収益が4000万ドルに達した2019年に、投資会社のポンデラの主導で3100万ドルを調達した。「ウィスカーは、アップルとダイソンが家電業界で行ったことをペット業界で成し遂げようとしている」と、ポンデラのパートナーのセス・バークレットは述べている。

ウィスカーは今後、ネコ用のトイレだけでなく自動給餌器や、ペットのヘルスケア分野のデバイスに進出しようとしている。例えば、ネコがトイレを使う頻度や、そのパターンを把握することが、腎臓病の発症リスクを知ることにつながる可能性がある。「私たちの目標は、ペットのヘルスケアの未来を作ることだ。ペットの食事や水や排泄のデータは健康管理に必要だ」とザプキは話す。

ウィスカーは2022年5月に、最新バージョンの全自動ネコ用トイレ「Litter-Robot 4」を発表した。しかし、その発売はスムーズには進まず、センサーの不具合などの問題に直面した。「大した問題ではないと考えたことが、大きな間違いだったことが分かり、それを修正するのに苦労した」とバクスターは話す。ソフトのバグを修正するために出荷にブレーキをかけなければならず、収益は最初の見通しを下回った。

それでもウィスカーは、将来の成長を視野に入れ、掃除機の「ルンバ」で知られるiRobotの元開発責任者のティム・セーガーを、会社の取締役に迎え入れた。

ウィスカーの全自動ネコ用トイレの出荷台数は、12月に累計100万台に到達した。「家庭用ロボット掃除機のルンバは、このカテゴリを代表する製品になった。Litter-Roboにもそれと同じチャンスがあるはずだ」とザプキは語った。

forbes.com 原文

編集・翻訳=上田裕資

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