CO2排出量の少ない独自製法プリント基板を、欧州から大量受注
・Hardware, Material & Frontier
量子コンピューターによるアルゴリズムの開発、宇宙ロケットの製造開発、ロボティクスといったディープテック企業が登壇。AIによる感情解析というユニークな事業を行うスタートアップもピッチに挑んだ。
テーマ賞:エレファンテック
CEO/CTO清水信哉氏
エレファンテックは2014年に創業。二酸化炭素(CO2)排出量の少ない製造方法で、スマートフォンやパソコンなど電子機器に用いられるプリント基板を生産する。同社のフレキシブル基板P-Flexは、ピュアアディティブ法という方法で製造されており、まず金属を原子数百個の細かな粒にしてインク(液体状)にし、それを同社が持つインクジェット技術によって、必要な部分にだけ印刷する。
従来は、全面に金属の膜を張り、不要な部分を削っているためCO2排出が多い。それに比べてエレファンテックのピュアアディティブ法では、製造に必要な材料が少ないだけでなくCO2排出量も少なく、また水使用量も20分の1に抑えられる。耐久性も既存のものと同等だ。
これまで70億円ほどの資金調達を行い、2020年、量産化に成功した。世界では80億ドル(約1兆500億円)の市場があり、欧州から数百万個の大型受注も受けているという。
今後は株主の住友商事が持つ、電子機器の製造子会社とともにグローバル展開を進めていく。
X線を代替する、メス不要のがん治療機器を承認申請
・Health, Bio & Wellness
線虫によるがん検査サービスや、薬局業務のデジタル化など医療領域で事業を展開する企業らがピッチ。また保育士の業務効率化を手がけるスタートアップや習慣化を支援する企業も登壇した。
テーマ賞:ビードットメディカル
CEO古川卓司氏
2017年創業。陽子線がん治療装置を開発する。陽子線装置は、メスや入院が不要で副作用も少なく、X線治療機器の置き換えとして期待される。しかし機械がX線機器の3倍と大きく、病院での導入が難しい。導入しているのは全国でわずか19施設。国内外で競合企業が陽子線がん治療装置の小型化に挑むが、いまだ10%程度の改善にとどまっている。
しかしビードットメディカルは従来サイズの3分の2となる陽子線がん治療装置を実現し、今年5月に1号機が完成した。夏には医療機器としての承認申請をし、結果を待っている状況だ。国内では200の病院が導入を検討しているといい、世界から引き合いがあるという。
小型化した治療装置が普及すれば、現在世界で1万4000台あるX線治療装置の置き換えができる。
まずはメーカーとして機器を販売し、保守や点検での収益化も見込む。